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案件:保険業法等の一部を改正する法律案

稲富修二 主な質疑内容
(1) 今般のロシアのウクライナ侵略による国際金融市場の変動が日本の生命保険会社の財務に与える影響
(2) 生命保険契約者保護機構による資金援助等の財源
   ア 事前積立の上限額として、資金援助等業務に要する費用の予想額に照らし十分な額として同機構の定款で定められている4,000 億円の算出根拠
   イ 上記アの上限額に令和3年度末に到達する予定であることから、令和4年度以降は追加積立を行わないことの確認
   ウ 本法律案による政府補助制度の延長幅である今後5年間において、生命保険業界が追加積立を原則として考えていないことの確認
   エ 事前積立が限度額に到達し、加えて政府保証付借入制度が恒久化されている中で、政府補助制度の延長を必要とする理由
   オ 生命保険会社の財務状況について今後5年間の中長期見通しに係る大臣の所見
   カ 公的負担となる政府補助制度の延長を是としても、生命保険業界の事前積立を増額し、業界負担による補償財源の確保を優先すべきとの意見に対する大臣の所見
   キ 本法律案提出の理由である「保険業を取り巻く経済社会情勢の変化」の具体的内容
   ク 「合計特殊出生率を1.8 へ上げていく等の努力の成果が出る等の状況になれば時限立法をやめてもよい」旨の平成28 年当時の大臣答弁について、現在も政府見解   
     として維持されているか否かの確認
   ケ 政府補助を実施する場合における予備費利用の可否
   コ 本法律案による政府補助制度の延長期間中に、同制度の是非、及び再延長する場合はその理由について改めて十分に検証すべきとの意見に対する大臣の所見
(出典:衆議院財務金融委員会ニュースより抜粋)

稲富修二 立憲民主党の稲富でございます。まず、法案の質疑の前に、先ほど委員の方から同趣旨の質問がありましたけれども、大臣に伺いたいと思います。ロシアによるウクライナ侵略の影響についてでございます。お手元、今、資料を御覧いただけますでしょうか。生保の保有金融資産の内訳というグラフでございます。令和二年度、最新のところでいえば、緑の次の青いところが対外直接投資、証券ということでございまして、平成十年から見ますと大幅に増えているということで、保有金融資産の中の四分の一を占めるということでございます。今回のウクライナ侵略によってルーブルが暴落をした、国際金融マーケットに大きな変動が生じている中で、今回の生命保険会社の財務にどのような影響を見ていらっしゃるのか、その基本的な認識をお伺いします。

鈴木国務大臣  日本の生命保険会社の一部ではロシア関連資産を保有しているわけでありますけれども、その額は運用資産全体の中では僅かでありまして、いずれの生命保険会社においても、ロシア、ウクライナ情勢が財務に与える直接な影響は限定的なものにとどまる、そのように考えております。いずれにいたしましても、今後のロシア、ウクライナ情勢がどのように推移していくのか、確定的に申し上げることは困難でございますので、金融庁としては、引き続き、内外の経済や金融市場等に及ぼす様々な影響を注視し、予断を持つことなく、日本の生命保険会社の財務に与える影響をきちんとモニタリングしてまいりたいと思っています。

稲富修二 しっかりとお取り組みいただければと思います。続きまして、法案の質疑に入ります。業界負担の在り方についてお伺いをいたします。保険業法二百六十五条三十三項では、業界負担枠、今回、事前積立て四千億、政府保証付借入れが四千六百のうち、事前積立ての金額については、機構の資金援助等業務に要する費用の予想額に照らし十分な額として定款で定めるところにより算定した額というふうにされております。生命保険契約者機構の定款七十条三項には、予想額に照らし、十分な額として、四千億と記載をされております。機構の資金援助等業務に要する費用の予想額、この四千億の算出の根拠、お伺いをいたします。

鈴木国務大臣  生命保険契約者保護機構の業界負担による事前積立てにつきましては、保険業法におきまして、機構の資金援助等業務に要する費用の予想額に照らし十分な額として定款で定めるところにより算定した額を積み立てることとされております。当該規定に基づきまして、生命保険契約者保護機構の定款におきまして、積立限度額は四千億円と記載されているわけでありまして、先生の御指摘のとおりでございます。この額でありますけれども、平成十年の制度創設時に規定されたものでありまして、その算定につきましては、十年間を念頭に置いて、複数の生命保険会社の破綻に対応できるような規模まで積み上げるとの考え方により設定したものと承知をしているところであります。

稲富修二 ありがとうございます。この四千億、後で更にちょっとお伺いをしますが、複数の破綻にも備える額として四千億というのでは、なぜ四千億であって五千億でないのかということには答えていないと思います。我々、賛成の立場で質疑をさせていただいておりますが、もう少しやはりその根拠が必要だと私は思います。ちょっと、続きまして、質問を移ります。この定款七十条三項において、事前積立てについて、四千億に達した事業年度の翌事業年度には、会員は負担を納付しなくてよいとされているということで、今年度で四千億に到達するわけでございます。前回の期限延長が行われた平成二十八年の参議院の財務金融委員会では、このように当時の大臣は答弁をされております。積立限度額到達後の負担の在り方をただした質問に対して、政府は、積立限度額到達時点の保険業をめぐる状況が不透明であること、保険業に対する信頼を維持するために考えられる適切な資金援助の枠組みを検討する必要があることから、その当時、平成二十八年当時、現時点では絵が描けているわけではないという旨で答弁を当時の大臣がされております。ということで、四千億という積立てがもう完了する今こそ業界負担の在り方をしっかり議論をすべきだと思います。そこで、伺います。来年度から業界負担の事前積立てというのは、四千億になるということで、行わないということなのでしょうか、伺います。

鈴木国務大臣  基本的に、この積立てにつきましては、業界でお決めになることでございますけれども、生命保険契約者、保険機構による資金援助等の財源のうち、業界による事前積立てにつきましては、今年度末に同機構の定款で定める四千億円の上限額に達する見込みでございます。そして、現段階で上限額を上回る積立てを行うということ、これは業界でお決めになることでありますけれども、予定されていないと承知をしているところであります。

稲富修二 今回の法律、五年延長ということでございます。五年間、要するに、更に四千億を積み立てますということを考えていない、業界は考えていない、そういうことでよろしいんでしょうか。

鈴木国務大臣  そういうことでございます。

稲富修二 次に伺います。業界負担のうち、事前の四千億は限度に達していると。事後の拠出である四千六百億の政府保証付借入れも既に恒久化をされているということで、今回、政府補助を延長するということなんですけれども、その根拠、論拠を教えてください。

鈴木国務大臣  生命保険会社の各社の財務でありますが、これは保険市場や社会情勢、内外の経済金融市場等の様々な要因によって影響を受けるために、中長期的な見通しを申し上げるということはなかなか困難であると思いますが、生命保険各社においては、中長期的に安定的で持続可能なビジネスモデルを構築し、保険契約者等の安心、安全が確保される環境となるよう、経営努力を積み重ねていただきたいと考えております。金融庁としては、生命保険会社によるそうした取組を日頃からの対話やモニタリングを通じて促してまいりたい、そのように思っております。

稲富修二 ありがとうございます。中長期の見通し、分からない、難しいものの、しっかりとモニタリングをしていくということでございました。大臣、ちょっと質問を、ごめんなさい、さっきのと変えていたします。そもそも、生命保険という金融商品を完全な自己責任でやるということを問いにくいという立場に仮に立ったとして、そうだとしても、今回、国費による要するに補償をする、この制度そのものについての是非が私はまずあると思います。それをおいておいたとしても、業界負担による補償財源確保というのをやはり優先すべきだと思うんです。先ほど、四千億の根拠は何ですかと言ったときに、私は十分なお答えじゃないなと思いました。当時あった破綻に耐え得る、それが四千億だとおっしゃった。しかし、普通に考えれば、この五年間、積立てを増すことも考えていない、普通であれば、民間会社でありますから、仮に国の補償制度を是としたとしても、当然、積立てをもっと増やすべきというのが先だというふうに考えるわけですけれども、大臣の見解を伺います。

鈴木国務大臣  業界による積み増しをもっと増やして、自主的な対応の比重を増やすべきではないかという先生の御指摘でございますが、これはそれぞれ政策判断である、そういうふうに思っております。生命保険契約者保護機構の資金援助等の財源、これは、繰り返しになって恐縮ですが、生命保険業界による負担が原則でありますけれども、生命保険業界の負担のみでは対応できないような不測の事態への対応を講じる観点から、政府補助の規定が設けられているところでございます。事前積立ての一層の積み増しを含めた生命保険業界による今後の負担の在り方については、保険契約者等の保護や保険業の信頼性の確保などの観点から、よく検討していく必要があると思っております。金融庁として、まずは、生命保険業界において、生命保険会社の財務状況や経済社会情勢の変化などを踏まえ、一層の検討がなされることを期待をしております。そして、業界と対話をしっかり行い、必要に応じて、より一層の検討を促してまいりたい、そのように思っております。

稲富修二 今回の延長は、四回目ということなんですね。平成十七年改正で現在の保険契約者保護制度のスキームが導入をされて、政府補助制度がこれまで三度延長されてまいりました。平成二十年、二十四年、二十八年。そのたびに、改正のときに、金融資本市場の変化があるということでございました。五年前の平成二十八年延長のときには、大きく理由が二つあって、少子化という構造問題がある、先ほど大臣も少し触れられました。少子化という構造問題があるということが一つ。二つ目が、英国のEU離脱決定などにあった金融資本市場の不安定化ということで、不測の事態に備えてという二つの理由があったと、当時の答弁であります。今回は、法案の要綱には、冒頭には「保険業を取り巻く経済社会情勢の変化を踏まえ、」ということで、これまでとは少し理由を変えて、金融資本市場という理由が落ちております。そこの、保険業を取り巻く変化というのは具体的に何を指すのかということをお伺いします。

鈴木国務大臣  保険業を取り巻く経済社会情勢の変化ということでございますが、具体的には、先ほど申し上げました少子高齢化の一層の進展や低金利環境の継続ということ、それに加えまして、長寿化による医療、介護負担の変化でありますとかデジタライゼーションの進展に伴う顧客の保険ニーズの変化なども生じている、そのことを指しているわけでございます。

稲富修二 ありがとうございます。あともう一つ、質問があります。平成二十八年十一月十六日、当時の麻生大臣が、五年前の延長に際してこのように御答弁をされております。合計特殊出生率一・八へ上げていくなどいろいろな努力をしているので、そういった成果が出てくる、またそういった状況になればこれは時限立法をやめてもいいわけなのでということを答弁をされております。先ほ来ありましたように、いわば少子化という構造問題があると当然保険に入る人が減っていくという問題があって、だからこそ、この制度の延長が必要なんだ、そういう論だと思うんですね。今の要するに、出生率一・八へ上げていくなどいろいろな努力をすれば、これは時限立法をやめてもいいわけということを当時、五年前答弁をされておりましたが、大臣、これは今も維持をされている政府の見解と思っていいんでしょうか、お伺いいたします。

鈴木国務大臣  先ほど申し上げましたとおり、様々な業界を取り巻く環境のリスクを申し上げたところでございまして、そうしたリスクが取り除かれていけば、そういう見通しがしっかり立てば、また新たな検討というものはなされることになるのではないかと思っております。

稲富修二 次に、政府補助を用いた場合の手続についてちょっとお伺いをいたします。政府補助の発動はこれまでされたことがないということが先ほど御説明もありました。発動要件は二つあって、破綻した生保、生命保険会社に係る費用負担について国民生活又は金融市場に極めて重大な支障が生じるおそれがあると認められる場合が一つ。かつ、業界負担枠を超える資金需要が発生した場合、この二つが発動理由かと思います。平成十二年の生命保険会社の連続の破綻のときを振り返ってみますと、四社がおよそ四か月ぐらいの間に破綻をしていくということでございました。平成十二年の五月、八月、十月、十月ということで、非常に短期間に連続的に破綻をしたというのが当時でございました。保険業法の附則第一条の二の十四を見ると、国民生活又は金融市場に極めて重大な支障が生じるおそれがあると認める場合には、予算で定める金額の範囲内においてということで、予算で定める金額の範囲内ということが書いてあります。とすれば、政府補助を用いた生命保険契約者保護を行う際は、財源措置として補正予算を組むということなのか、それとも予備費で対応できるのか、この辺を是非整理して御答弁をいただきたいと思います。

鈴木国務大臣  政府補助が発動した際の予算措置の検討に当たりましては、具体的に補助の規模がどの程度になるのか、また時期等の様々な要素があって、それを考慮する必要があるんだと思います。補正予算を組むのか、予備費で対応するのか等の具体的な予算措置方法につきましては、こうした要素を考慮して、その時点で決定することになると考えているところでございます。

稲富修二 ということは、予備費もあり得るということ、そういう御答弁だということでよろしいでしょうか。

鈴木国務大臣 あり得るということです。

稲富修二 ありがとうございます。ちょっと大臣、質問を飛ばして、平成十六年に出た保険契約者保護制度の見直しについてというところを伺いたいと思います。これまでいろいろ御質問させていただきましたけれども、この制度を延長するに当たっての前提、そもそも、政府補助の制度そのものを延長いかんということの前に、この政府補助そのものについての私はやはりもうちょっと政府として議論すべきだし、その理由をしっかりと示していただきたいと思うわけです。平成十六年のこの見直しについてという当時の金融庁の金融審議会金融部会第二部会が出した取りまとめを受けて、平成十七年に今回のスキームができたわけです。その十六年の報告書の中では、政府補助の是非そのものが論じられていて、三つの理由でこれは必要だと言っている。一つは逆ざやの問題、もう一つは生命保険機構の多額の借入金があるということが二つ目、三つ目が、生命保険会社が規模が大きくて破綻すれば金融市場や国民経済に甚大な影響を及ぼすという、この三つを言っている。
しかし、一つ目の逆ざやはもうなくなって、二つ目の多額の借入金も四千億でもうしっかりと整っているということで、三番目の、大き過ぎて潰せないという理由しかもうないんですよね。先ほど大臣は、いろいろな、様々なリスクがあるからとおっしゃった。その様々なリスクをもう一回しっかりとやはり議論してほしいし、それを報告書としてまとめるべきだと思うんです。何か、漫然と五年間延長するということにしか聞こえないんですよね。元々、前回、五年前は、少子化と、そして金融市場の不安定化、この二つだったんです。金融市場が不安定化していない以上、少子化というのは構造問題ですから、もし少子化が問題だというんだったら、五年じゃなくて恒久化せざるを得ない話になります。だから、これは、この次の五年間の間に、平成十六年から十八年間も、それ以降検証されていないんですよ。もう一回、この次の五年間のうちに、この政府補助の是非そして延長の理由、それをしっかりと検証していただきたいと思うんですけれども、大臣、見解を伺います。

鈴木国務大臣  稲富先生御指摘のとおりに、平成十六年の金融審議会の報告書の公表があったわけでございますが、それ以降、政府補助の規定について、累次の延長が行われましたが、その都度、その時々の生命保険会社を取り巻く経済社会情勢の状況等を踏まえまして、政府補助の必要性が検討されてきたものと思ってございます。そして、前回の延長から五年たって、今回の法案の提出に至っているわけでございますけれども、平成二十八年度の改正保険業法の検討事項、それがありますので、その検討事項を踏まえまして、生命保険契約者保護機構の財務状況でありますとか、また保険会社の経営の健全性の状況、さらに、保険業を取り巻く経済社会情勢等を幅広く検討をし、勘案をいたしました。その上で、この政府補助規定の必要性等について検討したところでございます。生命保険契約者保護機構の財務の状況や保険会社の経営の健全性の状況につきましては、安定しているものと認識はしておりますけれども、一方で、先ほど来申し上げておりますとおり、取り巻く環境につきましては、少子高齢化の進展、低金利環境の継続、さらには、長寿化による医療、介護負担の変化やデジタライゼーションの進展等に伴う顧客の保険ニーズの変化などが生じているところでございまして、こうしたことも検討して、今回の法案を提出させていただいたところでございます。

稲富修二 十分にはお答えいただけませんでしたが、次の五年間のうちに是非しっかりと御検討し、それをやはり報告書という形で示していただきたいと思います。以上で終わります。ありがとうございました。

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