活動報告

国会

平成30年5月23日 内閣委員会「ギャンブル依存症対策について」

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案件:
■環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案
■ギャンブル等依存症対策基本法案
■ギャンブル依存症対策基本法案
■参考人出頭要求に関する件

山際委員長 次に、稲富修二君。

稲富委員 国民民主党の稲富です。
 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 まず、樋口参考人にお伺いをいたします。
 二十九年九月に公表された疫学調査についてでございます。
 この結果についてなんですけれども、地域ごとの傾向とか、都会、都心部、農村部など、こういった地域の偏在というのはあるのかどうか、教えていただけますでしょうか。

樋口参考人 お答えいたしたいと思います。
 本調査においては都道府県別のサンプル数が十分でないので、都道府県別の解析までは今のところ行っていないということなので、そのあたりはよくわからないということです。
 しかし、今後、地域ごとの調査や対策について解析を進めて検討してまいりたいと考えてございます。

稲富委員 先生、ありがとうございます。
 引き続いてこの調査についてですけれども、先ほど来御指摘があったように、生涯を通じた依存症が疑われる方の割合が三・六%ということで、他の国よりも非常に数字上高いというふうになっているということでございますが、これは、高いと言っていいのか、あるいはサンプルの問題なのかということ、そして、もし高いとするならどう評価するかというか、日本のギャンブル依存症が高いということをどう評価するのか、教えていただけますでしょうか。

樋口参考人 お答えいたします。
 まず、今回の調査でございますけれども、御自宅に訪問して面接をしていくという調査でございました。海外の調査は、多くは電話による調査でございまして、調査方法が異なりますので、直接比較は難しいということだと思います。
 しかし、一般的に、日本では諸外国と比べてギャンブル等を行う環境が比較的身近にあるというふうなことなどが日本の割合の高さが目立つ一因というふうに考えますが、今後、更に知見の蓄積が必要だというふうに考えてございます。

稲富委員 ありがとうございます。
 これからの蓄積が必要だということの前提の中で、ただ、身近にあるという要因があるのではないかという御示唆かなと思いました。
 さらに、病気だとすると、先天性あるいは環境、そういった要因もあるのかどうか、ちょっと先生という立場から教えていただけないでしょうか。先天的なものがあるのか、あるいは後天的に、やはり環境によってそういう症状に陥るのか、教えていただけますでしょうか。

樋口参考人 この点に関しては、少ないながらも、遺伝に関する研究というのが行われています。特に、双子を使った研究、一卵性双生児と二卵性双生児の一致率を見た研究でございますが、これによると、ギャンブル依存症の場合には、遺伝の貢献が五〇%ぐらいではないか、環境の貢献が五〇%ぐらいではないかということなんですね。これは、ほかの依存症もほぼ全て同じです、行われた研究で。
 ですから、そういうふうなことになっていますが、ただ、遺伝といいますと、決定論的な話がすぐ出てきますから。決してそうではなくて、リスクが高くなる、だから、適切な予防をすると発症を予防できるというふうなことだと思います。

稲富委員 ありがとうございます。
 今回の公表されたこの疫学調査は非常に示唆するところが多いなと思って拝見したんですが、ただ、サンプルの数、そして、先ほど、さらなる調査が必要かなという御指摘もあったかと思います。
 今後の調査研究についてはどうあった方がいいかという御示唆があれば、また教えていただけますでしょうか。

樋口参考人 今回の実態調査については、先ほども申し上げましたが、平成二十八年度から平成三十年度の三カ年にわたって行っている調査でございまして、現在も解析が進んでいるところでございます。
 また、ギャンブル等依存症が疑われる人の割合を一時点だけで評価するというのは問題が起きてくる可能性がございますので、その推移を定期的に把握する重要性が多くの有識者の方からも指摘されています。
 私たちの研究班としては、ギャンブル等依存について全国調査を定期的に行う必要があると強く考えてございます。しかし、その時期や頻度については、今後検討が必要だというふうに考えてございます。

稲富委員 引き続きまして、先ほど御質問があったことで、ちょっと通告ができなかったことなんですけれども、依存症をどう克服するかということで引き続き先生に一点お伺いしたいのは、病気というふうに考えると、もちろん、なってからどう克服するかも大事ですけれども、ならないように、予防をどうするかというのが更に大事なのではないかと思うんですね。
 そういう意味では、この法案にも予防ということが、対処が必要であるということが書かれておりますが、より具体的に、どういった予防が考え得るのか、専門家の立場からぜひ御教示をいただきたいと思います。

樋口参考人 お答えいたします。
 予防には、一次予防、二次予防、三次予防というふうに、レベルによって分かれてございます。
 一次予防というのは発生予防ですけれども、こういうふうな場合には、やはり教育、それからあと国民に対する知識の普及というのがすごく大事だというふうなことになってございます。
 それから、二次予防の場合には、早期に発見して早期に治療に導入していくというふうなことが言われていまして、そのためには、相談体制がしっかりできていることとか、あるいは、御家族の中には御自分の例えば御主人に問題があっても全然何が起きているかわからないような、理解できないようなケースもあったりするので、そういうふうな知識の普及と相談体制、それから早期の治療の導入の状況があればよろしいんだと思うんですね。
 もう一つ、三次予防というのは、回復した人が再び、要するに、もとに戻らないこととかあるいは社会復帰を支援するようなことでございますので、そういうふうなことを支援していくような社会的なメカニズムが確立されていくことが大事だというふうに考えてございます。

稲富委員 院長、ありがとうございます。
 続きまして、法案の方に幾つか御質問させていただきます。
 まず、基本的なことで、今年度のギャンブル依存症対策予算の規模についてお伺いをいたします。

中川政府参考人 お答え申し上げます。
 政府におきましては、ギャンブル等依存症対策について、一昨年末に関係閣僚会議を設置し、昨年夏にはその強化策を取りまとめ、患者さんが必要なときに早期に治療や相談を受けられる環境の整備等を推進しているところでございます。
 委員お尋ねの平成三十年度の予算につきましては、全ての都道府県・政令都市における依存症専門医療機関と相談拠点の選定、依存症を正しく理解するための普及啓発活動、そして、依存症者、家族を対象に全国規模で支援に取り組んでいる自助グループ等民間団体への支援、さらには、学校教育などにおける依存症の予防教育、そして、貸付自粛制度の整備や多重債務対策における取組等の経費を合わせれば、ギャンブル等依存症を含む依存症対策全体の推進に係る予算として、総額で約六・四億円を計上しております。
 政府としては、ギャンブル等依存症により不幸な状況に陥る人をできるだけ少なくし、健全な社会を構築するため、政府一体となって不断に取組を強化していく所存でございます。

稲富委員 ありがとうございます。
 この財源についてですが、先ほど来ずっと、両案の違いがここに非常にくっきりとあらわれていると思います。
 そこで、ちょっと重なりますが、立憲、無所属の会、自由、社民案、まずお伺いをします。
 もちろん、さまざまな立場で考え方は違いますけれども、どういう考え方に基づいて事業者負担の可能性をここに明記したのかということをもう一度ぜひお答えください。

初鹿議員 お答えいたします。
 先ほども御答弁させていただいておりますけれども、ギャンブル依存症対策を実施するためには、やはり費用をしっかりと確保するということが非常に重要だというふうに思っております。
 一般財源も当然ですけれども、やはりギャンブル依存症の発生等の原因となり得る事業を行っているギャンブル関連事業者が負担をするということは、私は適切ではないかというふうに思っております。

稲富委員 続きまして、自公維修正案の方にお伺いをします。
 これも同じことですけれども、では、今後どれぐらいの規模で、先ほど六・四億円というふうに伺いましたけれども、これは絶対値なので、多い、少ないとは言えませんけれども、抜本的にギャンブル依存をなくすということからすると、例えば医療施設を充実させるとか相談所をふやすだとか教育を充実させるだとかいうふうに考えると、ちょっと予算的にはえらく、直観的にですけれども、少ないなと私は思いました。
 とするなら、現実的にどうやって財源を確保するかということは考えざるを得ないところでありますので、どれぐらいを、もちろん大体ですね、そして、どうやってそれを調達するのか、改めてお伺いをさせていただきます。

桝屋議員 お答えを申し上げます。
 先ほど政府の方から六億円の話が出ましたけれども、先生、確かに、ギャンブル等依存症対策として今後どの程度の事業規模、予算規模が考えられるのかというお尋ねでありますが、ここは、今回お出ししている法案は基本法でありますので、これから基本計画をつくっていただき、そして、各地方にあっても、地方によって随分格差もございますので、地方も努力義務として計画をつくっていただく。その中で、必要な予算の規模、事業の規模というのは決まってくるんだろうと思います。
 こうした、今回、ギャンブルの依存症が議論になりまして、少なくとも、厚生労働省の予算を見ておりましても、今まで中谷先生がお取り組みになったアルコール健康被害対策、あるいは薬物依存対策、これに加えてギャンブル依存ということも大きな問題になりまして、厚労省としても、この三つをあわせて依存症対策ということで特段の取組をしようと、これは相互に関連し合っているという位置づけもございますので。
 私は、予算は確実にふえてきていると思いますが、なお今後の事業については、計画の中で、政府において適切に計画化し、必要な予算を一般財源として確保してもらいたい。そうした中で、民間の事業者の皆さん方の協力体制というのは、これから大きな検討課題ではないかなと思っております。

稲富委員 ありがとうございます。
 民間事業者も検討課題かなというところまでおっしゃっていただきました。ここの点は、私、最も対策としての両案の哲学が出る部分じゃないかと思うわけです。
 と申しますのは、もちろん、事業者が負担をする仕組みが難しいというお話がありましたけれども、税金でやるということは、当然ながら、全く関係ない人から税を、その対策に充てるということでありますので、それは一納税者の理解が得られないといけないとも言えます。したがって、これはやはり、それなりの財源を確保し、どうするのかといったときに、納税者にどう説明するのかということは当然必要になってくると思います。
 そういう意味で、ここは両案違いますけれども、やはり事業者にもというのが、やっていない人間からすると人情の部分ですし、納税者としての気持ちはやはりあると思います。ぜひ、そういった意味で、御検討いただければなということを思います。
 ということで、続きまして、自公維案の第二条の中で、そもそもギャンブルというところで、その定義の中で、公営競技とパチンコ、そしてその他の射幸行為という言葉がありますが、その他の射幸行為というのは何なのか、教えていただけますでしょうか。

中谷(元)議員 射幸行為というのは、偶然を当てにして利益を得ようとする行為ということで、そのような行為を射幸行為としております。法律でギャンブル等といたしておりまして、これは、法律の定めるところにより行われる公営競技、パチンコ屋に係る遊技その他の射幸行為ということで定義をさせていただいております。

稲富委員 ありがとうございます。
 続きまして、政府の参考人に伺います。
 このギャンブル依存症について、高等学校教育指導要領解説というものをつくられる、既につくり始めているんですね。これはいつから使用されるのか、またどのように使われるのか、教えてください。

藤江政府参考人 お答え申し上げます。
 文部科学省といたしましては、平成二十九年八月にギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議において取りまとめられました「ギャンブル等依存症対策の強化について」に基づきまして、学校教育の観点から、平成二十九年度末に公示されました高等学校学習指導要領の保健体育の指導内容の一つとして、新たに精神疾患を取り上げたところでございまして、現在作成中の高等学校学習指導要領解説保健体育編におきまして、精神疾患の一つとしてギャンブル等依存症を記載することといたしておるところでございます。
 今後、周知徹底や教科書検定等を経まして、新高等学校学習指導要領及び同解説に基づく高等学校の授業は、二〇二二年度に入学する生徒から年次進行で実施される予定でございます。
 以上でございます。

稲富委員 ありがとうございます。
 与野党ともに、第十四条で教育のことは明記をされております。教育においてどういう指導を行うのか、それぞれ政治家という立場で御答弁いただければと思います。

佐藤(茂)議員 今、稲富委員御指摘のとおり、我々の自公維案でも、第十四条では、ギャンブル等依存症である者等やその家族が十分に相談や受診につながっていないという課題を解消するために、国民に対し、ギャンブル等依存症の予防等に必要な注意を払うことができるよう、ギャンブル等依存症問題に関する知識を普及することをこの第十四条では想定しております。
 その中でも、先ほど樋口先生もおっしゃいましたように、一次予防では教育が大事である、こういうことを述べられておりました。私どもも、まさに依存症の予防教育が大切である、そのように考えておりまして、今、文部科学省からもありましたように、高等学校の学習指導要領解説への記載をする方針も政府の方で決定されたというように聞いておりますので、ギャンブル等依存症を予防する観点からは、成人する前に子供の発達段階に応じてギャンブル依存症問題に関する知識を得ておくことが私どもは望ましい、そういう観点から、この第十四条に教育ということも入れさせていただいているということで御理解いただきたいと思います。

初鹿議員 我々も、今、与党の答弁があったとおり、考え方としてはほとんど変わりはありません。
 最近では、インターネットで馬券を購入することができるようになっているなど、若い者がギャンブルにアクセスしやすくなっているという現状もあります。
 また、大阪商業大学のアミューズメント産業研究所の研究員であります大谷信盛氏の論文によりますと、北米の調査結果で、八歳までにギャンブルを経験した子供は、そうでない子供に比べて五倍の確率で成人してからギャンブルに関する問題を引き起こすことになるという調査結果も紹介をされております。また、この論文では、これも、ネバダ州の調査なんですけれども、青少年のギャンブル依存症の発症率がおよそ四%から八%であって、北米全体における成人のギャンブル発症率が一%から三%と比較をして、二倍から三倍になっているということであります。
 つまり、若い方々がギャンブル依存症に陥るリスクが高いということでありますので、中高生の段階から依存症に対する知識をしっかりと持っていくことが望ましいと考えております。

稲富委員 ありがとうございます。
 次に、依存相談所、そして医療機関についてでございます。
 私の出身の福岡は、実は公営競技場が全てそろっている県でございまして、全国で埼玉と福岡、そして中央競馬を含めて全てがそろっているのは福岡のみでございます。しかし一方で、では、相談支援体制という意味では充実しているかというと、表を見てみても、特段という感じがいたします。
 そういった意味で、自治体によっては多いところ、少ないところがありますが、その理由をどう分析されているか、政府の答弁を求めます。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。
 厚生労働省では、ギャンブル等依存症につきまして、地域で必要な医療や支援等を受けられるように、医療体制や相談体制の整備に取り組んでいるところでございまして、具体的には、都道府県等において、専門医療機関の選定や、依存症の専門相談員を配置した相談拠点機関の設置の働きかけなどをしているところでございますが、委員御指摘のように、整備が進んでいない実態が存在するのも事実でございます。
 厚生労働省としては、さらなる体制の整備が必要であると考えておりますが、整備が進んでいない自治体に対しましてその理由を幾つか聞いたところ、専門医療機関につきましては、その要件の一つである依存症に係る研修を修了した医師の確保などが進んでいないということ、あるいは、アルコール依存症等と異なりまして、地方公共団体の責務などを定める基本法などが整備されていないというような理由も挙げられたところもございました。
 厚生労働省におきましては、平成二十九年度から、国立病院機構久里浜医療センターにおいて地域で専門的な研修を行うための指導者を養成するとともに、都道府県等においても地域の医療機関を対象とした依存症医療研修を実施しておりますが、これに加えまして、距離的、時間的な制約で養成研修の受講が困難な医師のために、情報ポータルサイトを活用したeラーニングの導入などについても検討を進めているところでございます。
 今回のギャンブル等依存症基本法案も踏まえまして、さらなる医療提供体制及び相談支援体制の整備に努めてまいりたいというふうに考えております。

稲富委員 ありがとうございます。
 両案提出者にお伺いします。
 十六条、十七条で、相談支援体制、医療体制の充実ということがうたわれておりますが、具体的にこれからどのように整備を図っていくのか、両案の提出者にお伺いをいたします。

岩屋議員 まず、第十六条に基づく医療提供体制の整備についてですけれども、各都道府県・指定都市におきまして、ギャンブル等依存症の専門的な治療機関を整備し、地域の関係機関との連携体制を構築するとともに、他の医療機関への研修や地域住民への普及啓発等を通じて、ギャンブル等依存症である方々を適切な相談、治療につなぐことができる相談、治療体制を整備することを想定しています。
 第十七条に基づく相談支援等につきましては、例えば、各都道府県・指定都市において、ギャンブル等依存症の相談体制を整備するために、精神保健福祉センター等を相談拠点として整備をいたしまして、かつ、そこに依存症相談員を配置するということを想定しております。

初鹿議員 我々の案も、与党案と大きく異なるところはございません。
 第十六条に基づく医療提供体制の整備については、与党の方がおっしゃったこととほぼ同様だと思います。
 更に加えて申し上げれば、ギャンブル依存症に対する専門的な医療の確立に向けた研究の推進をいかに図っていくかが課題となっていることから、ギャンブル依存症に対する専門的な医療の確立に向けて、標準的な治療プログラムの開発やエビデンスの構築を進め、医療現場にその成果を広めていくことなどを想定させていただいております。
 第十七条に基づく相談支援等につきましても、こちらも、各都道府県・指定都市において、ギャンブル依存症の相談体制を整備するためには、精神保健福祉センター等をギャンブル依存症に関する相談拠点として整備し、やはりここで依存症相談員を配置するということを想定しております。

稲富委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

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