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【議事録・動画】令和6年5月10日 財務金融委員会「事業性融資の推進等に関する法律案」について

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案件:事業性融資の推進等に関する法律案について
いなとみ修二 主な質疑内容:
(1)本法律案が不動産担保、経営者保証に依拠してきた我が国の融資慣行を変化させる効果の定量的な見込み
(2)企業価値担保権を活用した融資件数を目標に設定しない理由
(3)地域金融機関における、いわゆる目利き力向上のための方策
(4)認定事業性融資推進支援機関
 ア 同支援機関の役割及び人材構成
 イ 地方にも目を向けて対応する必要があるとの意見に対する金融庁の見解
 ウ 金融機関と中小企業の緊密な関係が構築された融資が根付いた段階で同支援機構は不要となるとの意見に対する金融庁の見解
(5)企業価値担保権の担保目的財産となる「総財産(将来において会社の財産に属するものを含む)」の意味と評価方法
(6)企業価値担保権の設定における労働債権の保護
 ア 実行前の期中管理において、貸し手(債権者)や企業価値担保権者から人員整理や労働条件の引下げなどの経営関与を受ける可能性の有無
 イ 制度趣旨を明確にするために今後改正される監督指針等を貸し手、借り手等の関係者に周知徹底する必要性
 ウ 企業価値担保権の設定に際して、労働者への事前通知・説明を行う必要性
 エ 貸し手及び担保権者又は管財人の労働組合法上の使用者への該当可能性について周知・広報する必要性

稲富修二 立憲民主党の稲富でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
今回の法案、事業性に着目をして融資をできるような仕組みということで、企業価値担保権が新たに設立をされるということでございます。やはり、地域を歩いていますと、中小企業のオーナーの方々のお話を聞くと、厳しいときは貸してくれないんだよな、いいときは借りてくれと言われるけれどもという言葉を随分と多く聞いてまいりました。そういった中で、事業を継続し得るような融資、事業性に着目をしてということは、理念としては是非進めてもらいたいということを思いを込めて、一つずつ、少し法案の中身を確認したいと思います。
まず、目的でございますが、先ほど来ありましたように、第一条でこのようにあります、不動産を目的とする担保権又は個人を保証人とする保証契約等に依存した融資慣行の是正及び会社の事業に必要な資金の調達等の円滑化を図り、もって会社の事業の継続、そして国民経済の健全な発展に寄与することを目的とすると。そこで伺います。不動産担保、経営者保証に依拠してきた我が国の融資慣行の変化を、この法案によって変えていきたいということだと思いますが、この新法によってどの程度それを見込んでいるのか、定量的な効果の見込みを示していただきたいというふうに思います。

鈴木国務大臣 今回の法案で導入をいたします企業価値担保権、これは、事業者の将来のキャッシュフローや無形資産を含む事業全体を担保の目的とする新たな担保権でありまして、御指摘のように、不動産担保や経営者保証に安易に依存せず、事業者の実態や将来性等に着目した融資をより一層推進するため、新しい選択肢を提供するものであります。企業価値担保権の利用件数等の定量的な見込みということでございますが、これにつきましては、事業者を取り巻く経営環境や、それに応じた資金調達ニーズの状況にもよるために、定量的な見込みをお示しすることは困難ではございますが、企業価値担保権については、例えば、有形資産に乏しいスタートアップ企業、現経営者の設定している経営者保証の後継者への引継ぎが困難であることを理由として事業承継が進んでいない事業者、そして、事業再生を通じた潜在的な回復可能性はあるものの担保余力が乏しい事業者などにおいてその活用が見込まれるのではないか、そのように考えております。

稲富修二 企業価値担保権の、先ほどおっしゃらなかったんですけれども、例えば件数とかいうことを目標に置くことはしないという御答弁だったかと思いますが、そこに関するデメリットは何かということ、これは局長さんで結構ですので、答えていただきたい。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。この法案に盛り込まれた企業価値担保権については、あくまでも事業者のニーズに応えた適切な活用が求められるというふうに考えてございます。仮に、一律に利用件数を報告される場合には、これを金融機関側がノルマ的に受け止められた場合には、かえって件数稼ぎ的な、形式的な融資実績等をつくり上げるみたいなことも懸念されまして、事業者のニーズに応えた適切な活用の妨げとなっては、これは本末転倒だというふうに考えてございます。一方で、金融庁といたしましては、実態を把握することは極めて重要だというふうには考えてございます。具体的な活用事例などを含めました実態把握の方策については、今後、本制度の適切な活用の妨げにならないように適切に検討していって、十分なモニタリングですとか実態把握ができるよう、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

稲富修二 この目的には、最終的には国民経済の健全な発展という、いわばマクロの大きな目標もあるわけで、是非その実態把握とともに、何らかのやはり目的、指標というのが必要ではないかということを申し上げたいと思います。続きまして、先ほど馬場議員からもありました目利き力についてお伺いしたいと思います。これを向上させることがこの政策の成否に大きく関わるということは全くそのとおりでございまして、特にメガバンクなどは、それなりに人材がたくさんいらっしゃる、豊富にある、専門性もある。しかし一方で、地域の金融機関というのは多くの、幅広い範囲の業務を担っていただいております。しかし、他方で、その強みというものがありまして、やはり地域の経済事情に明るいということもあろうかと思います。そういう意味でいうと、目利き力というのは地域金融機関においても当然ながら必要だということで、これが向上していっているのか、そして、どうやってそれを向上させるのかということを改めて御答弁願いたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えを申し上げます。委員御指摘のとおり、地域経済や事業者の持続的な成長を支えるためには、金融機関において事業者の実態や将来性等を的確に把握、評価できる目利き力を養っていくことがますます重要になっており、金融機関には、その向上に向けて、人材育成等により一層取り組んでいただく必要があるというふうに考えております。こうした中で、先ほどメガバンクとの比較について御質問ございましたけれども、確かに、地域金融機関におきましては、メガバンクに比べて限られた人員であらゆる業務運営を行うという中で、知見、ノウハウの蓄積に難しさを感じるという声も聞かれておりますが、他方、これも委員から御指摘のとおりでございますけれども、地域金融機関におきましては、事業者との緊密なリレーションを構築しやすいという強みがあるというふうに考えております。金融庁といたしましては、金融機関の人材育成等を後押しする観点から、例えば、融資先の経営改善を支援する際の着眼点を支援対象となる業種ごとに整理した「業種別支援の着眼点」を公表し、その研修を実施するなどの取組を行っているところでございます。引き続き、金融機関の目利き力向上に向けて、人材育成等の取組を後押ししていきたいと考えております。

稲富修二 是非、取り組んでいただきたいと思います。
続きまして、事業性融資推進支援機関について伺います。第四章では、事業性融資を推進するため、金融機関と中小企業者の支援体制として事業性融資推進支援機関を政府が認定することになっております。金融機関、中小企業者への支援ということで、それぞれに対して支援をすると聞いております。今回の企業価値担保権は非常に多岐にわたっておりますし、当然、新しい概念の担保を設定をするということ、したがって、新たな専門家を育てていかなきゃいけないということ、また、今回、恐らく参考にしていた米国と違いまして、まだまだ事業性融資に対しては歴史が浅いということから、この支援機関が必要だということは理解はいたしますが、改めて、この役割と、そしてどういう人材で構成するかということをお伺いします。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。今般の法案に盛り込まれております企業価値担保制度でございますけれども、先生おっしゃるとおり、事業者の事業全体の価値が担保価値となる全く新しい担保制度でございますため、この制度が広く活用されていくためには、金融機関において事業内容や将来性等を的確に把握して、事業全体の価値を適切に評価できる必要がありますほか、事業者側におきましても、金融機関が事業の状況を適切に評価できるよう、事業計画のほか、事業の強みや弱みを金融機関に適切に伝えるようになることが必要だろうというふうに考えてございます。
このため、この法案におきましては、御指摘のとおり、事業性融資を推進する支援機関の認定制度を盛り込んでございます。この支援機関は、金融機関や事業者に対して、例えば、経営資源や財務内容の分析を実施し、経営実態を把握する方法に関する助言ですとか、事業計画の策定に関する助言などを行うことを想定してございます。
このような支援を行うに当たっては、支援機関を構成する人材につきましては、例えば事業性融資や中小企業に対する経営支援に知見を有する必要があるというふうに考えてございますが、今後、事業性融資において具体的に求められる支援の内容ですとか、支援のために必要な能力について検討する中で、必要となるより具体的な人材像につきましては、法案が成立いたしましたら、例えば全国銀行協会ですとか、日本商工会議所などの各種業界団体などとよく相談して検討してまいりたいというふうに考えてございます。

稲富修二 その点で二つ申し上げたいことがありまして、やはりどうしても、小さく始めるということになりますと、首都圏中心になるんじゃないかと想像します。しかし、先ほど申し上げましたように、地域金融機関でどう人材育成するかということが大事であるということからすれば、地方にはしっかりと目を向けてもらいたいということ。むしろ、スタートアップにしても、事業承継にしたって、地方にも当然あるわけでございます。
もう一つは、本来的には、このような支援機関というのはなくなる方がいいということを思います。金融機関と中小企業者の間で関係性がしっかり構築されて融資が行われるということになれば、これはそもそも要らないわけでございますし。したがって、その二点について、ちょっともう一回コメントいただければと思います。

井藤政府参考人 先生御指摘のとおり、地域におきますこうしたスタートアップを始めとした様々な事業に対する円滑な資金供給というのは極めて重要でございまして、引き続き、地域についても、私ども、しっかりと目を配って対応していきたいというふうに考えてございます。また、究極的には、こういった融資制度が根づけばこういう支援機関は要らなくなるということは、そのとおりだと思います。この支援機関というのは、何も新しい組織をつくるというわけではございません。あくまでも、今ある既存のいわゆる適切な団体等にお願いできないかというふうに考えているわけでございますので、しっかりとそこが根を張った段階では役割を終えていくんだろうと。ただ、それがいつかと言われますと、なかなか現時点では見通すのは難しいかなというふうに考えてございます。

稲富修二 今の二点を踏まえて、是非御対応いただきたいと思います。
続きまして、企業価値担保権の対象となる、第七条にある会社の総財産という言葉についてです。今回の担保権のまさに対象は、会社の総財産という、この条文にしか書かれていないこの言葉なんですね。これがなかなかどこにも定義が非常になくて難しいところでございまして、括弧書きで、将来において会社の財産に属するものを含むとしか書かれていないということでございます。したがって、この会社の総財産とは何なのかということを御説明いただきたいのと、これをどう評価するのかということを併せてお答えを願いたいと思います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。先生御指摘ありましたとおり、今回の企業価値担保権の目的となります財産は、将来キャッシュフローなどを含む一体としての総財産でございます。この総財産の中には無形資産等の個別財産が含まれるものの、これらは事業活動の中で絶えず入れ替わるものであり、企業価値担保権の担保の目的は、あくまでも一体としての総財産としてございまして、基本的に個々の財産の評価というものを想定しているものではございません。また、担保価値である事業全体の価値の評価につきましては、例えば、将来キャッシュフローの見通しを基礎として割引現在価値の幅を推計する方法など様々なバリエーションが考えられますけれども、具体的な方法は、各金融機関において、個々の事案の特性等に応じて、顧客に逆に選ばれるための創意工夫、あるいは経営判断によって適切に定められるべきものと考えてございます。
金融庁といたしましては、これらの点に関する好事例の把握、公表などを行うとともに、課題を感じる金融機関に対しては、専門的な知見の提供等の支援を行う支援機関の活用を促していくというふうに考えてございますけれども、金融機関における事業性融資に係る取組の後押しに向けて、こうした評価の点も踏まえまして、更にどのようなことができるか、金融機関等の関係者と更に丁寧に相談してまいりたいというふうに考えてございます。

稲富修二 極めてざっくりとしていまして、総財産と言われても、なかなか、それこそ地域の金融機関あるいはその事業者にとっては分かりにくいものでございますので、是非その点も踏まえて対応いただきたいと思います。
続きまして、労働債権について幾つか伺います。今回、本法案により、企業価値担保権の活用によって貸し手である金融機関からタイムリーな経営改善支援が実現されるとされておりますが、一方で、借り手である企業からすれば、伴走支援を受けるということなんですけれども、倒産でないような局面においても、平時から様々な人員整理あるいは労働条件の変更などを要求される場面があるのではないかという懸念もあるわけでございます。伺います。そういった貸し手あるいは担保権者から、人員整理、労働条件の引下げなどといった経営関与があり得るのか、この点についてお伺いします。

井藤政府参考人 済みません、委員御指摘の担保権者や貸し手の金融機関による人員整理や労働条件の引下げなどの経営関与に関しましては、昨年二月の金融審議会の報告書におきましても、担保権者は労働条件などについて決定する等の権限を有するものではないとの提言をいただいてございます。こうした制度趣旨に関しましては、法案成立後、関連する監督指針等を改正し、関係者への周知、広報等に努めてまいりたいというふうに考えてございます。
また、伴走支援による行うべきでない助言ですとか指導というものが懸念されるということに関しましては、企業価値担保権が設定されている場合に限らず、借り手に対して金融機関が取引上の優越的な地位を不当に利用し、取引の条件又は実施について不利益を与えるような行為については銀行法令等において禁止されており、金融庁としては、金融機関のこうした法令等を遵守しつつ、制度趣旨を踏まえて、経営者の自主性を尊重しつつ、事業者の状況に応じた経営改善支援等を適切に行っていくよう、しっかりとモニタリングを行ってまいりたいというふうに考えてございます。

稲富修二 大臣にちょっとお伺いします。
これは監督指針を出されるというふうに伺っておりますので、その文書というものを例えばホームページに載せるということだけではなくて、担保権者、あるいは貸し手、借り手に周知すべきだというふうに思いますけれども、その点の扱いについて伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 こうした制度の趣旨に関しましては、法案成立後、関連する監督指針等を改正するということを考えておりますので、御指摘のとおり、関係者への周知、広報、これはしっかりと進めていきたいと思います。

稲富修二 続きまして、企業価値担保権を設定する場合の事前説明について伺います。
本法案では、企業価値担保権の設定において、特に労働者への通知を義務化しておりません。労働者は、単に担保目的財産に含まれる労働契約の一方の当事者というだけでなく、事業の維持、発展を進めていく上で大切な利害関係者でもあります。事業を円滑に推進するために、使用者からの丁寧な事前説明、誠実な労使協議を行うことが欠かせない。そのために、担保権を設定する前に労働者への通知、説明が必須ではないかという声がありますが、その点について御説明をお願いします。

鈴木国務大臣 昨年二月の金融審議会の報告書におきましては、担保権設定時の労働者保護を図る観点から、本担保権の理解促進に向けて、本担保権の目的は事業成長担保権者が労働条件等に影響を及ぼすことではないこと、労働者との紛争防止の観点から、担保権の設定の際に労働組合等への説明を行うことが望ましいなどについて、政府において積極的な周知、広報を図るというような提言をいただきました。御指摘の担保権設定時におけます労働組合等への通知や事前協議につきましては、他の担保制度とのバランス等を踏まえ、今般の法案には義務づけの規定は盛り込んでおりませんけれども、こうした提言を踏まえまして、法案成立後、金融庁において、厚生労働省等の関係省庁とも連携をして、例えば担保設定時における労働者とのコミュニケーションの在り方など、制度趣旨を踏まえた運用に関する考え方をガイドライン等の形で公表することを検討いたしております。それとともに、本担保権を活用した新しい融資実務への正しい理解を促す観点から、当該ガイドライン等の内容を含め、制度の内容や趣旨について、関係者への周知、広報等に取り組んでまいりたいと考えております。

稲富修二 ありがとうございます。
続きまして、使用者性について伺います。担保権者、貸し手、管財人が、労働組合法上の使用者に該当するかという問題でございます。そもそも使用者に該当するかということと、その使用者性について何らかの政府の考え方を示すべきではないかという、この点についてお伺いします。

鈴木国務大臣 先生の御質問のうち、企業価値担保権の実行手続におけます管財人は、これは債務者からの事業の経営をする権限を引き継いでいるために、労働組合法上の使用者に該当すると考えております。また、担保権者や貸し手については、担保権を設定すること又は与信を提供することのみをもって労働組合法上の使用者に該当するとは言えない一方で、基本的な労働条件等について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、使用者性を有する可能性があると考えられます。企業価値担保権を活用した融資を行う金融機関は、労働組合法上の使用者として経営に関与することを意図するものではないと考えられることから、昨年の金融審議会の報告書におきましては、企業価値担保権に関する正しい理解を促すため、担保権者等の使用者性について、こうした考え方を周知することが提言されております。この提言を踏まえまして、金融庁としては、法案成立後、担保権者や貸し手が労働組合法上の使用者性を有する場合等について、関連する監督指針等を改正して明記するとともに、厚生労働省等の関係省庁とも連携をして、労働法制が守られるかどうかについて懸念を持つ借り手側の事業者、従業員などへの周知、広報等にも取り組んでまいりたいと考えております。

稲富修二 終わります。どうもありがとうございました。

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