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2月22日(火)衆議院本会議 会議録公開

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案件:所得税法等の一部を改正する法律案

稲富修二 
立憲民主党・無所属の稲富修二です。
 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論いたします。(拍手)
 岸田総理は新しい資本主義を打ち出しましたが、今回の税制改正案には新しいものはなく、従来の小粒な改正の延長にすぎません。日本経済や国民生活を改善する意思を感じない改正であり、到底賛成できません。
 以下、理由を申し上げます。
 反対する一つ目の理由は、岸田政権には、法案以前に、財政運営に対する基本姿勢に問題があることです。
 財務省による決裁文書の改ざん問題であります。改ざんに関与させられ自死に追い込まれた赤木俊夫さんの御遺族が国を訴えていた裁判について、昨年十二月、国は、急遽認諾することを決め、裁判を終結させました。赤木さんが亡くなった経緯の真相解明に蓋をしたことは極めて遺憾であり、政府の不誠実な態度に怒りを覚えるものであります。
 問題はここで終わりませんでした。約一億七百万円の損害賠償金の支払いを、改ざんを指示した人物ではなく、全額を国民に求めるとのことであります。このような税金の使い方は到底認められるものではありません。当然、国家賠償法に基づく求償権を行使すべきであると度々訴えておりますが、政府は、改ざんを指示した人物に重大な過失があるとは考えていないために、求償権を有するとは考えていないとの回答に終始しています。赤木さんが改ざんの強要で自死に追い込まれたことは明白であり、これが重大な過失に当たらないのであれば、一体何が重大な過失に当たるというのでしょうか。
 本当に国家財政を任せて大丈夫なのか、岸田政権の公正観、公平感が疑われます。国民の信頼に関わる根幹の問題であります。問題の解決に向け、真摯に対応されることを強く求めるものであります。
 反対する二つ目の理由は、目玉と言われている賃上げ税制の効果が期待できないことです。
 賃金が上がらないことが日本経済にとって最大の問題であり、賃上げを実現するための施策に取り組むことについては同じ立場であります。しかし、今回の法案での拡充策は、何ら新味がありません。その効果については、委員会審議を通じても、説得力のある説明は政府からついぞ聞くことはできませんでした。
 そもそも、約七割に及ぶ赤字法人には全く効果のない政策です。そして、赤字法人の大半は中小企業でありますから、賃上げ税制の適用を受けられる大企業と適用を受けられない中小企業との間で格差が生じ、分配どころか、経済格差を逆に拡大させることになりかねないと危惧しております。中小企業が雇用の約七割を支えていることを併せ考えれば、国民の多くはこの賃上げ税制の恩恵を受けられないことになります。
 賃上げ促進の税制自体は、第二次安倍政権から導入、実施されてきましたが、この間、実質賃金は上がっておらず、むしろ下がっていたというのが現状です。今回の賃上げ税制も、制度の拡充が行われたとはいえ、これまでの基本的な仕組みを変えておらず、その質、量において、賃金が上がらないという日本経済の構造問題を解決するという効果検証もございません。
 今回の賃上げ税制の拡充により、国税、地方税合わせて平年度ベースで一千七百三十三億円の減収が見込まれています。むしろ、これだけの財源があれば、人への投資を更に拡充できるはずであります。
 反対する三つ目の理由は、岸田政権は足下の国民生活に対して極めて冷淡な対応を取り続けていることであります。
 まずは、インボイス制度の導入です。
 この本会議場でもインボイス制度の導入延期を求めましたが、岸田総理は、軽減税率の実施から十年間の十分な経過措置を設けていると、相変わらずの御答弁に終始されました。極めて残念であります。
 改めて申し上げますが、二〇一九年の軽減税率実施から二〇二三年のインボイス制度導入までは四年間しかありません。加えて、この間、新型コロナウイルス感染症の発生と拡大の影響を受けて、多くの事業者が厳しい状況に置かれております。経過措置の期間を設定したときとは状況が大きく変わっております。総理は、事業者の方々への不安に応えてまいりたいともおっしゃいましたが、本当にそうお考えであるならば、今からでも遅くありません、最低限、導入の延期を決断すべきであります。
 次に、高騰するガソリン価格への対応です。
 この法案の審議入りの一週間前、レギュラーガソリン小売価格の全国平均が約十三年ぶりに一リットル当たり百七十円を超えました。以降、今日まで値上がりを続けており、値下がりの兆しはまだ見えておりません。ただでさえコロナ禍で家計が傷んでいる中で、この値上がりは死活問題になりかねません。
 政府は、燃料油価格激変緩和措置を発動し、石油元売会社に対して補助金を支給することを決定しましたが、支給額は既に上限の単価五円に達しております。これ以上の価格抑制効果は期待できない上に、そもそも小売価格が確実に値下がりするかどうか不透明であり、家計負担の軽減という観点からは、不十分な仕組みと言わざるを得ません。直接的にかつ十分に家計の負担を軽減するためには、トリガー条項の凍結を解除し発動すべきです。
 昨日の予算委員会で、岸田総理は、トリガー条項も含めてあらゆる選択肢を排除せず、更なる対策を早急に検討したいと御答弁されております。危機に瀕する国民生活の中、検討の時期は終わったと思います。実行すべきであります。我々は、昨年の時点で、既に、トリガー条項の凍結を解除し発動するための法案を提出しております。値下げを求める国民の切実な声に耳を傾け、トリガー条項の発動、そして、その効果が及ばない灯油、重油については購入費を補助するなど、家計の負担軽減につながる政策を早急に実行すべきであります。
 反対する四つ目の理由は、今改正案は検討事項が多く、質、量共に中身が乏しく、税制改正を通じ日本経済を再生させる総理の熱意を全く感じないことであります。
 格差拡大、少子化、人口減少、莫大な財政赤字という構造問題に対しても、検討ばかりで、税制を通じた解決は盛り込まれておりません。大玉の改正をことごとく先送りしております。今般の税制改正では、総理が総裁選で主張していた金融所得課税の強化を見送りました。この姿勢にこそ、とにかく大過なく無難に過ごしたい、そういう岸田政権の本質が現れているのではないでしょうか。
 税制の改正には必ず反対がつきまといます。特に、増税についてはなおさらです。やらないことについては、反対が少ないかもしれませんが、時間という目に見えない膨大なコストを伴います。総理の聞く力が実行力の欠如にならないか、大変心配しております。
 我々は、この間、コロナ禍での国民生活を支える政策とともに、所得税の最高税率引上げ、将来的な総合課税化を見据えた金融所得課税の強化、法人税への超過累進税率導入など、負担増をお願いする財源確保策も明確に主張してまいりました。
 欧米でも、コロナ禍における財政支出の増大を受けて、財源確保のために、大企業や富裕層に対する増税等を検討あるいは実施する動きが進んでいます。我が国の公債残高は、令和三年度末に初めて一千兆円を超える見通しであります。財政状況がますます厳しくなる中、財源確保に向けた具体的な税制改正の議論が政府・与党内で低調だったことは極めて問題であり、日本の財政に対する信頼を揺るがしかねません。
 以上の理由から、政府提出の所得税法等の一部を改正する法律案については、明確に反対するものであります。
 総理、政権誕生からのハネムーン期間は終わりました。検討を重ねる期間も終わりました。実行するときであります。
 現下の厳しい状況を乗り越えていく上で、税制が果たすべき役割はますます大きくなっていると考えます。我々は、今後も、政府の問題点をただすとともに、これからの時代のあるべき税制の在り方について提案を続けてまいります。
 御清聴、誠にありがとうございました。

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