案件:
■国務大臣茂木敏充君不信任決議案
■永年在職議員の表彰の件
■文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案
■気候変動適応法案
■特定複合観光施設区域整備法案
議長(大島理森君) 稲富修二君。
〔稲富修二君登壇〕
稲富修二君 国民民主党の稲富修二でございます。
私は、国民民主党・無所属クラブを代表して、ただいま提案のございました茂木大臣の不信任決議案に対し、賛成の討論を行います。(拍手)
最初に、安倍政権、与党の国会軽視、権力を私物化する政権、国会運営に厳重に抗議いたします。
森友、加計問題などについて、国会の議論を改ざんや隠蔽で妨害する政府の態度は、国民主権をないがしろにするものであります。この政府は誰を向いて仕事をしているのか、国民の税金は誰のために使われているのかという深刻な政治不信を生んでおります。
TPP整備法改正案を審議している内閣委員会でも、与党が強引な運営を続けています。国民生活にとってメリットも少なく、問題だらけのTPPやカジノ法案を優先しようとする与党の姿勢は言語道断であり、我が党としても強く抗議するものであります。
不信任決議案に賛成する最大の理由は、茂木大臣が、多くの問題を含んだTPP11協定を推進し、署名を行った当事者であるということであります。
国民民主党は、包摂的な成長の観点から、自由貿易を堅持し、国益も守りながら、国際間の経済連携をますます推進し、保護主義の台頭を食いとめる必要があると考えます。私たちは、そのような観点から、高いレベルでの経済連携を積極的に推進し、地域の新しいルールをリードする立場に日本が立つべきだと考えております。
しかし、今回のTPP協定は、そうした基本から外れ、日本を含めた加盟国の国民にとって大きな利益をもたらすものとはなっておりません。
TPPは米国抜きでは意味がない、再交渉が不可能であるのと同様、根本的な利益のバランスが崩れてしまう、二〇一六年十一月に安倍総理御本人がおっしゃっているとおり、米国抜きでは意味がないのではないでしょうか。また、この期に及んでも米国復帰を望むのは、甘い期待と言わざるを得ません。
協定の第一の問題点は、一昨年の国会で、安倍内閣により強引に承認されたTPP協定の内容をほとんど引き継いでいることであります。
工業製品分野など、我が国として攻めるべき分野で十分なメリットが得られず、また、農産物主要五品目など、守られなければならない分野において相当な譲歩を迫られました。
今回の協定では、二十二項目の凍結項目が設けられたものの、その他の大部分については協定の内容が踏襲されており、市場アクセス、関税に係る部分については全く変更がなされておりません。
協定の第二の問題点は、我が国の国内農業への深刻な打撃が必至であるということであります。
カナダやニュージーランドなどを始めとする農産物の輸出国にとっては有利ですが、我が国のような農産物の輸入国にとっては著しく不利であります。農水省が国内の農業従事者には影響はないとの無責任な試算を示していることも、到底納得することはできません。
協定の第三の問題点は、交渉経過に係る情報公開が全くなされていない点であります。
今回のTPP11協定における凍結項目の決定過程などについても、政府はその内容を全く明らかにしておりません。国民の知る権利を徹底的にないがしろにする政府の姿勢は、決して容認できるものではありません。
そもそも与党自民党は、二〇一二年十二月の衆議院選挙において、聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対すると公約を掲げ、全国には、「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」と記されたポスターを張り出しました。
現在進めているTPP協定は、この選挙公約に違反しているとしか思えません。公約違反は明らかではないでしょうか。
自民党の選挙公約違反についても、TPPについての多くの問題点についても、茂木大臣から納得のできる説明は行われていないままであり、非難せざるを得ません。
不信任案に賛成する第二の理由は、経済再生担当である茂木大臣が、アベノミクスの司令塔として、日本社会の格差拡大を進めたことであります。
茂木大臣は、今年度の日本経済について、雇用・所得環境の改善が続く中で、民需を中心とした景気回復が見込まれる、年初の経済演説で述べました。
しかし、内閣府が発表した二〇一八年一—三月期国民所得統計一次速報によると、実質国内総生産、GDPは前期比マイナス〇・二%、年率換算マイナス〇・六%となり、一五年十—十二月期以来の九四半期ぶりのマイナス成長となりました。
二〇一七年度の実質GDPの成長率は一・五%、名目GDP成長率は一・六%となりました。見た目の成長率を膨らませるのが安倍政権の常套手段でございましたが、それさえも失敗し、実質、名目ともの低成長となったことについて、茂木大臣は責任をとるべきだと考えます。
何よりも働く人たちの賃金が下がっていることを直視しなければなりません。二〇一六年における民間の平均給与は四百二十二万円となっていますが、二十年前には四百六十一万円、十年前に四百三十五万円だったものから大きく下がっております。
審議入りした働き方改革法案が通ると、国民の賃金は上がるのか、実質賃金は改善されるのかをただしても、安倍総理は、全体の需要が伸び悩む状況下では賃金上昇につながりにくい面があると釈明しております。茂木大臣が、今年度の日本経済について、雇用・所得環境の改善が続くと説明していることとも矛盾いたします。
茂木大臣は、生産性革命、人づくり革命というスローガンを掲げますが、大企業がもうかれば、おこぼれが中小企業や庶民に行き渡るという発想自体が間違っております。中小企業や庶民の懐をまず暖める再分配政策が重要であると訴えてまいりましたが、大臣は基本認識を変えることはありませんでした。
茂木大臣に潔く辞していただくこと以外に、日本経済の再生はないと確信をいたします。
不信任決議に賛成する第三の理由は、茂木大臣が、財政再建という国家の重大な政策課題を担当する大臣でありながら、放漫財政を放置していることにあります。
安倍総理は、衆議院解散に先立ち、二〇一七年九月の記者会見において、二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成を公然と放棄をいたしました。茂木大臣も、安倍総理のばらまき財政路線に追随するだけで、財政規律の確立に必要な政策に取り組む姿勢を見せておりません。
政府は、二〇二五年度までの財政健全化計画を策定する中で、二一年度に中間目標を設ける方針と伺っております。過去における中間目標も未達成であるのに、また同じ轍を踏もうとしているのでしょうか。まさに問題先送りと批判せざるを得ません。
バブル好況に沸いた一九九〇年度から九三年度を除いて、毎年度ごとに特例法を制定し、やむなく赤字国債を発行するという形をとってまいりました。毎年度に国会が採決をし法律をつくっていたので、政府、国会が緊張感を持っておりました。
しかし、二〇一六年度から二〇二〇年度までの五年間、まとめて特例公債の発行を認める法律に改悪されてしまいました。五年に一回しか国会の議決がないとすると、財政再建に対する意識もますます希薄になってしまいます。
茂木大臣は、旧民進党が参議院に提出した、二〇一八年度に限って赤字国債の発行を認める法案を握り潰し、本来プライマリーバランスの黒字を達成すべき年度までの特例公債を出すことを何ら疑問視しておらず、遺憾にたえません。
以上の諸点を踏まえまして、これ以上茂木敏充君が大臣を続けることは我が国のためにならないことを確信いたします。
アベノミクスは六年目に入り、財政も金融も当初の目的を達せられないことが明らかになってまいりました。アベノミクスという言葉自体が空虚に聞こえるようになってまいりました。
また、首相答弁と真っ向から反する愛媛県の新文書が明らかになりましたが、森友、加計問題などによって国会の議論は大いにゆがめられております。うそや隠蔽や改ざんを繰り返し、国会からTPPや財政、金融などの大切な政策論争を奪ってきたのは、責任は、ひとえに政府・与党にあることを強く申し上げたい。
アベノミクスの司令塔たる茂木大臣がみずから辞任をされることが最善でありますが、衆議院として不信任決議案を議決することを呼びかけて私の賛成討論として、終わります。
ありがとうございました。(拍手)