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国会

【議事録・動画】令和5年2月10日 内閣委員会「ギャンブル等依存症対策、賃上げ政策等」について

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案件:ギャンブル等依存症対策、賃上げ政策等について
いなとみ修二 主な質疑内容:
(1)他国の気球による領空侵犯
(2)ギャンブル等依存症対策
(3)賃上げ政策

稲富修二 立憲民主党の稲富でございます。
まず、中国の気球について、気球撃墜問題について官房長官にお伺いします。
アメリカ本土の上空を飛行していた中国の偵察用と思われる気球を、米軍が今月四日、洋上で撃墜をいたしました。この気球に似た飛行物体は日本でも、三年前宮城県上空、二年前青森県でも目撃をされました。昨日の記者会見で官房長官は、昨年一月、九州西方の公海上空で確認されたということを発表されました。
そこで、幾つかお伺いをいたします。
我が国上空に他国の気球が許可なく侵入した場合は、これは領空侵犯に該当するか、お伺いします。

松野国務大臣 稲富先生にお答えをさせていただきます。
外国の気球であっても、我が国の許可なく我が国領空に侵入すれば領空侵犯となることに変わりはありません。
その上で、領空につきましては、国際法上、国家の主権が及ばない宇宙空間との関係で、その境界は明確になっていませんが、航空機が通常飛行している高度までの空間を領空と呼ぶことについて、各国に異論があるとは承知をしていません。
こうした点を踏まえれば、御指摘の気球に関しましては、上空一万八千メートルの空域に外国の気球が我が国の許可なく侵入すれば領空侵犯に当たると考えています。

稲富修二 ありがとうございます。
続きまして、この四日、アメリカの東海岸で撃墜された中国の気球が、北米に至る間、我が国の領空を侵犯したという事実はあるかどうか、お伺いをします。

木村大臣政務官 お答えいたします。
政府として、平素から警戒監視に万全を期すとともに、大きな関心を持って気球の情報収集、分析を行っていますが、事柄の性質上、情報の一つ一つについてのお答えはできないことを御理解ください。
いずれにせよ、いかなる国であっても、他国の主権を侵害することは許されません。政府として、我が国の主権を守り抜くためにも、引き続き同盟国等とも連携しつつ気球の情報収集、分析に全力を挙げてまいります。

稲富修二 官房長官に伺います。
この気球に関して、中国から許可の申請があったという事実があるのか。先ほど答えられないということだったんですけれども、申請があったという事実があるか。過去、軍事、研究など、用途を問わず、中国から領空に侵入する気球の許可を得るような申出はあったのか、官房長官に伺います。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。
 我が国の領空で気球を飛行させる場合は、航空法に基づいて許可の申請又は通報が必要でありますが、お尋ねの気球に関して、これらの手続は確認されていません。また、記録が保存されている過去一年間の範囲においても、中国の気球に関して、これらの手続は確認されていません。

稲富修二 ありがとうございます。
官房長官に最後に伺います。領空侵犯をした気球が仮にあったときに、我が国は撃墜ができるのかということなんですけれども、これは法律上できるのか、あるいは技術的に、現実的にそれが可能なのかということをお伺いいたします。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。
外国の気球が我が国の許可なく我が国領空に侵入すれば領空侵犯となることに変わりはありません。対領空侵犯措置の任務に当たる自衛隊機は、自衛隊法第八十四条に規定する必要な措置として、武器を使用することができます。
個別具体的な状況にもよることから、一概にお答えをすることは困難でありますが、無人のものによる領空侵犯の場合の一般論として申し上げれば、国民の生命及び財産を守るために必要と認める場合には、所要の措置を取ることができます。また、当該措置を取るに当たっては、具体的な状況に即し、適切な装備品等を用いることとなります。
なお、今般の米国における事例においては、米軍は戦闘機から空対空ミサイルを用いて対応したものと承知をしています。

稲富修二 御答弁ありがとうございました。しっかりとこれは対応いただきたいというふうに思います。
以上でこの問題は終わりますので、官房長官そして関係の方、御退室どうぞ。ありがとうございました。
続きまして、ちょっと順番を変えて、ギャンブル依存についてお伺いをいたします。
昨年の当委員会で、依存症対策について岡田大臣に質問させていただきました。基本法に基づいて、ギャンブル依存症対策推進基本計画を三年ごとに検討を加えるということになっております。その三年目に当たるということで、是非このタイミングでこの質問をさせていただきます。
まず、前回も質問させていただいたんですが、公営競技のインターネット投票についてであります。これを見てみると、非常に増えているのではないか、そして、容易にこのインターネット投票がやりやすくなっているのではないか、そういった声をいただいております。是非、どれぐらい投票が増えたのか、依存症への影響など、現状について大臣の見解をお伺いします。

岡田国務大臣 お答え申し上げます。
稲富委員御指摘の、公営競技におけるインターネット投票とギャンブル等依存症の関連については、現時点で明確な因果関係は立証されておりませんが、こうしたインターネット投票の利用が広がる中で、ギャンブル等へのアクセスが容易になることにより依存症の増加につながることがないように、しっかりと対策を講じていく必要があると認識をいたしております。現在、各公営競技において、本人や家族の申請に基づきインターネット投票の利用停止を行う制度や、利用者本人の申請に基づき購入限度額を設定できる制度が導入されるなど、様々な取組、特にのめり込みを防止する取組が展開されているところであります。
さらに、ギャンブル等依存症対策推進基本計画に基づいて、これらの制度について一層の周知を図るために、インターネット投票サイトにおいて視覚に訴える新たな注意喚起表示を、令和六年度を目指して導入することといたしております。
こうした取組を着実に進め、公営競技のギャンブル等依存症対策にしっかりと取り組んでまいりたいと存じます。

稲富修二 ありがとうございます。
大臣、売上げに占めるインターネット投票の割合が随分と増えているという、是非その現状の推移について数字を御説明いただければと思います。

榊原政府参考人 お答え申し上げます。
売上げに占めるインターネット投票の割合の推移でございますが、上昇傾向にあるということでございます。例えば中央競馬会の場合ですと、令和元年は七〇・四%であったのが、令和二年には九二・七%になるなど、上昇しているところでございます。
以上でございます。

稲富修二 ありがとうございます。
上昇傾向どころか急上昇していまして、今、売上げに占めるインターネット投票の割合は、中央、地方競馬が約九割以上。そして、オートレース、競輪、モーターボート、どれも平成二十九年に比べて令和二年はプラス三〇ポイントぐらい増えていて、オートレースは八割、そしてモーターボートも約八割ということで、急激にこの数年間で上がっているわけです。
それで、先ほど大臣は対策をするということなんですけれども、私も、このサイトを見ると非常に、私は公営競技そのものは、当然、楽しむことは否定するわけではもちろんございませんが、若い人がどうアクセスするのか、あるいは依存症の方がこれによってどうなるのかというのは、当然、御家族の方、あるいは我々子供を持つ親としては、やはりちょっと心配になるところではあります。
先ほど、これからそういうサイトにアクセスをする方法について一定の規制といいますか告知といいますかをされるということでありますけれども、やはり更に強い規制のようなものが必要ではないかというふうに思うわけですけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。

岡田国務大臣 お答え申し上げます。
まず、公営競技におけるインターネット投票の利用状況、先ほど稲富委員が御指摘になり、また政府参考人からもお答え申し上げましたように、かなりの角度で伸びてきているという現実もございます。
こうした利用状況等をしっかりと把握した上で、今後の状況も注視しながら、関係省庁、例えば競馬なら農水省、競輪、オートレースならば経産省、またモーターボートならば国交省といったところと連携をいたしまして、依存症の増加につながることがないように必要な取組を進めてまいりたいと存じますし、先ほども申し上げましたが、視覚的に訴える新たな注意喚起表示のイメージということで、注意喚起表示を出して、それをクリックすればアクセス制限等の案内画面へ移行する、そういった今の時代に適応した注意喚起の方策というものも、各省庁とも連携を取って更に検討し強化してまいりたい、このように存じます。

稲富修二 ありがとうございます。
オンラインカジノについても同じようなことがございまして、これも非常にアクセスがしやすい。これはもう完全な違法である、犯罪であるということで、前回も、これは是非周知をしていただきたいということを申し上げました。是非、この点も併せてお願いをしたいと思います。
それで、今日は児童手当のことを少し、家族の方々から切実な声としてあるので、その点を、是非改善をいただきたいということで問題提起をしたいと思います。
こういった事例がございます。ギャンブル依存症の親御さんの口座に児童手当が振り込まれる、それが使い込まれてしまうという問題が発生をしているということです。
例えば、児童手当もそうですけれども、コロナ禍において一人十万円という給付金もありました。そういった形で各個人の家庭に給付をするということがこれからあり得るわけで、継続的に児童手当のようなこと、そして臨時的にそういうこともあり得るということで、口座について、御家族が変更ができない、依存症の方から御家族に、是非、そうではない家族に変更ができるようにしてほしいという要望でございます。
 それで、調べてみますと、確かに児童手当は、更に言えば、これから児童手当を拡充する、あるいは所得制限をどうするという議論はありますし、いわば、もっと給付を拡大するという議論を国会ではしている途上にあります。ですので、そういった意味でも是非ちょっと考えていただきたいことなんですけれども、お手元の資料をお配りをさせていただいております。
児童手当制度は、支給対象は児童を養育している方となっております。そして、児童手当制度では、一番下の方ですね、私がマーカーを引いているところでは、「以下のルールを適用します!」というところで、「児童と同居している方に優先的に支給します。」となっている。その前に、父母が離婚協議中などにより別居している場合は、同居している親御さんに支給をされるということなんですけれども、これだけだと、普通に考えれば、所得が多い、あるいはお父さんの方に支給をされる。しかし、そのお父さんが仮にギャンブル依存の場合は、そこの口座にある、それをお母さんに変えることが、この今のルール上だと、離婚協議中など別居している場合じゃないとできないということになっているということなんですよね。
 ただ、ギャンブル依存症対策基本法では、基本理念の三条一項にこう書いてあります。ギャンブル等依存症である者等及びその家族が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるように支援すると。つまり、ギャンブル依存症の方のみならず、その御家族が日常生活を円滑に営むことができるようというのは基本理念にうたわれております。ですので、この運用のところ、法律は改正する必要はないと思います、運用のところで、「父母が離婚協議中などにより別居している場合は、」というところのみならず、今のような場合に、振り込み先をギャンブル依存ではない方の親御さんに、仮に同居していたとしても振り込めるように、そういう運用に改めていただきたいというのが趣旨なんです。
これは各市町村によって恐らく対応が違うのではないかと思います、運用自体も。したがって、国として、大臣は所管ではないけれども、ギャンブル依存の所管の大臣として、担当する大臣に働きかけをしていただきたいというふうに要請をしたいのですが、大臣の見解を伺います。

岡田国務大臣 お答え申し上げます。
私は、ギャンブル等依存症対策推進担当大臣として、依存症で苦しんでおられる本人や御家族がどのような悩みを抱えているかをしっかりと把握して対策を講じていくことが必要であると考えておりまして、この点において、稲富委員の御指摘をしっかりと受け止めたいと存じます。
委員御指摘の児童手当については、本来の目的に沿って子供のために使われることが重要であると考えておりまして、委員の問題意識、よく理解できるというふうに存じます。
先ほどもおっしゃっていただきましたけれども、私は児童手当制度を所管しておりませんが、今後、機会を捉えて、児童手当の担当大臣、こども政策担当大臣やその担当部局ともこうした認識をしっかりと共有をしていきたい、このように存じます。
ギャンブル等依存症により不幸な状況に陥る人をなくし、健全な社会を構築していくために、関係省庁としっかり連携をしながら、必要な取組を着実に前に進めてまいりたいと考えております。

稲富修二 前向きに御答弁いただいたものと思います。是非、御趣旨を酌んでいただいてお取り組みいただければと思います。ありがとうございます。それでは、岡田大臣、ここで結構です。ありがとうございました。
次に、政府の目玉であります賃上げについて、後藤大臣、幾つかお伺いをしてまいりたいと思います。
前回も、十月の委員会でも、ちょっと途中になってしまいましたけれども、賃上げのことを少し伺わせていただきました。それで、まず、賃金がなぜここ三十年間も上がってこなかったのかということをお伺いしたいんです。
一昨年末、令和三年の十一月に、我が党の議員が質問主意書でこういう質問をしております。年間賃金データによると、三十年前と比べると、日本は四%増である、OECD平均は三三%増である、日本は横ばいである理由はどうかということに対して、政府としては、様々な要因があると。その一つの要因は、相対的に賃金水準の低い女性や高齢者の労働参加が進んだことが賃金の平均値を下げているということを、質問主意書で政府として答えられている。
昨年二月、財務金融委員会で、私の質問に対して鈴木大臣は、今のことと加えて、デフレマインドが浸透してしまい、投資や賃上げに向かわなかった、消費者も将来不安で消費を抑え込んだ、両面から賃金が上がらなかった、こういう御答弁をされております。
少し、一年時間がたって、是非大臣の、なぜこれまで賃金が上がらなかったのかという見解を伺いたいと思います。

後藤国務大臣 今委員が御議論になったのは、我が国の一人当たりの賃金のことだろうというふうに思います。
総雇用者所得は伸びながら、どうして下がったのかということについては、そういう現象もありますけれども、しかし、過去三十年間の他の先進国と比較して伸び悩んできたのは事実でございまして、この要因については、諸外国では経済成長とともに賃金が上昇してきた一方で、我が国について言えば、バブル崩壊以後、長引くデフレと低成長を背景としまして、企業が賃金を抑制する、そして家計は消費を抑制した、その結果、需要が低迷して、デフレと低成長が継続する悪循環に陥ったことが挙げられると思います。こうした悪循環の中で、企業の行動も慎重化いたしまして、収益増加や生産上昇に見合う分配が行われず、賃金が伸び悩んできたということだと認識いたしております。

稲富修二 恐らくその問題意識は、二〇一三年ですね、第二次安倍内閣の最初の骨太の方針でも、同趣旨の多分問題意識が示されているのではないかと思います。それで、その際には、再生の十年を通じたマクロ経済の姿とその道筋と高らかにうたっているわけです。その中でこのような趣旨が書かれております。中長期的に、二%以上の労働生産性の向上を実現し、物価上昇を上回る賃金上昇につなげる。
二〇二〇年頃までに国内総生産六百兆円を達成する目標を掲げ、このため、年約三%程度の賃上げが必要ということで、これを基に春闘での賃上げを要請しているということなんですよね。いわば、そういう課題があって、この十年、ちょうど十年前の骨太の方針、第二次安倍内閣の発足から、いわばアクセルを踏んで、賃金を上げるようにということで取り組んできたと思うんですね。その結果として、マクロ経済としての対策は効果があったのかということについては、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

後藤国務大臣 アベノミクスの御指摘のときに、六百兆円のGDPを目指すという目標でありまして、新型コロナが流行する前の段階において、相当の程度GDPは回復してきたということだろうと思いますけれども、二%の物価の問題だとか、あるいは実質賃金の問題等は目標に達していなかったというのは事実だろうというふうに思います。そういう意味で、今回、実質賃金をしっかりと引き上げていく、そういう形の新しい資本主義の経済運営や雇用政策に取り組むということで、今、必死になって取り組ませていただいています。

稲富修二 その二〇一三年の骨太の方針以来、いわば賃上げとしての政策を政府として取ってきた、それの効果はあったのかということについてはいかがでしょうか。

後藤国務大臣 そのときに、例えば所得拡大税制をやっていくとか、それなりに経済の刺激政策をやってきました。また、企業が生産拡大ができるような様々な措置も講じてきておりますけれども、結果として言えば、御指摘のような、一人当たり実質賃金の上昇が十分に行われていなかったということは、率直にお認めをしたいというふうに思っています。
それは、先ほども申し上げたみたいに、やはり、長引くデフレの中で、そして低成長の中で、企業は賃金を抑制する、そして投資がなかなかできない、そういう行動の中で、マクロ経済自身をきっちりと好循環で回していけなかったことが問題だろうと思います。
そういう対策を行うためには、やはりサプライサイドにおいて、きっちりとした労働政策や、あるいは新しい生産性を生む企業の投資、そうしたものにしっかりと対応していく必要があるというふうに思います。

稲富修二 大臣、ありがとうございます。
結構率直におっしゃったので、ちょっとびっくりしたんですけれども、要するに、効果がなかった、非常に薄かったという御答弁だったかと思うんですね。そのとおりで、かなりその問題意識を持って政府として取り組んだけれども、なかなか十分な効果が得られなかった、だからこそ今からやるんだ、そういう御答弁かと思ったんですね。
その際に、私、幾つか思うのは、まずサプライサイドのということと、同時に、生産性を上げるということは当然GDPを上げるということとつながる話で、つまり需要も拡大しなきゃいけない。したがって、そのためには、子育て支援だとか、これから人口減少をストップさせるような政策も必要だということは、それはもうまさにそのとおりだと思うんですね。これから賃上げを進めるに当たって、賃上げをやらなきゃいけないことに当たって、中小企業についてどうするのかということは非常に難しい課題だと私は思うんですね。
と申しますのは、これだけ物価が上がって、賃上げだと世の中が言っていたとしても、当然、私の地元にいる社長さんに、賃上げするんですかと、そんなのは政府が決めるものじゃない、それは、今の現状からすると、そんな簡単にすぐ上げられるものじゃないというのが率直な声だと思うんですよね。しかし、どうやって国として上げていくのかということを考えなきゃいけない。
そこで、大臣に伺いますが、どういうふうにして中小企業の働いている方々の賃金を上げていくのか、政策としてどういうことを考えられるのか、お伺いしたいと思います。

後藤国務大臣 まずは、構造的な賃金引上げにしっかりと取り組むことによって経済全体を動かしていくということは前提となると思います。その上で、中小企業の賃上げについて特に注意すべき点をお答えするとするなら、御指摘のとおり、我が国の雇用の七割は中小企業が占めていまして、中小企業の賃上げが鍵になるという認識は持っています。このために、中小企業が賃上げできる環境整備に向けて、生産性向上に強力に支援を集中する、そして、足下の物価高騰を踏まえた価格転嫁対策にしっかりと取り組むことが必要だろうというふうに思っています。
具体的には、中小企業における生産性向上支援策として、令和四年度第二次補正予算において、ものづくり補助金を始めとする生産性向上のための補助金二千億円、事業再構築補助金五千八百億円を措置したところであります。また、給与支給総額を六%以上増加させるなどの意欲的な賃上げに取り組まれた事業者に対しては、補助上限や補助率を上乗せする措置などもやっております。
また、価格転嫁対策としては、取引先とサプライチェーンを通じて共栄共存をしていくというパートナーシップ構築宣言、一月末時点で一万八千社がパートナーシップ構築宣言をしていますし、経団連のうち四百九十社もパートナーシップ構築宣言をしました。こうした宣言をより拡大して、そういう社会的な条件を整えていくこと。それから、価格転嫁対策について言えば、公正取引委員会や下請Gメンの大幅な増員による体制強化とか、それから、価格転嫁あるいは価格交渉の状況について、中小企業庁が親事業者約百五十社の交渉、転嫁の状況を一覧にして初めて公表する等、取組を強化いたしています。
さらに、三月に迫る次の価格交渉促進月間においても、これまでの体制強化を生かして、交渉や転嫁の状況がよくない親事業者に対する指導助言を徹底的に行うことにいたしております。
これらの取組によりまして、適切な価格づけを通じてマークアップ率を高めて、物価上昇に負けない賃上げや、コスト上昇の転嫁のできる適切な支払いを確保していくこととしたいと思います。

稲富修二 ありがとうございます。
私、価格転嫁対策、これは大事だと思います。その他おっしゃった、様々な補助金のメニュー、御説明もいただきました。ただ、先ほど申し上げたように、二〇一三年から、賃上げが必要だと政府は言って、様々な取組をして政策も打ったけれども、大きな成果は得られなかった。これは多分そのとおりで、だから、この延長線上で考えてはもう賃上げというのは起こらないんじゃないかというのが私の問題意識なんですよ。
だから、補助金を出す、その他様々な施策をするということによって、当然、短期的に、今のこの物価が急上昇している、上がっているときに、それに負けない賃上げをということをおっしゃっているわけですよね。短期的にそんなことができるのかと思うんです。
もう一つ言えば、先ほど言ったように、今の延長線上の、これまでやってきた延長線上の額を積み増すとか、これまでやってきたことを更に大きな額でやる、大規模にやるのではもう駄目なんじゃないかというのが私の問題意識なんですよ。
そこで、やはり内部留保の問題に触れざるを得なくて、これはどうするのか。五百兆円にももう積み上がってきているわけですよね。これだけ賃上げだ、あるいは投資に向かわせてほしいと言っているけれども、どんどんどんどん積み上がるばかりで。それに対して、いやいや、こうするんだとおっしゃるかもしれないけれども、これをどうするんですかと。ここをいわば企業が賃金やあるいは投資に吐き出さない以上は、賃金というのは上がらないんじゃないかと思うんですよ。だから、今のアプローチの延長では駄目なんじゃないかと思うんです。
しかし、内部留保については、二重課税だから課税は考えない、そして、それに対して具体的にどうするのかということをお伺いしたいと思います。端的にお伺いします。

後藤国務大臣 企業収益が現預金として保有されるだけではなくて、賃金や人への投資、これにしっかりと結びついていくことが重要です。それが成長と分配の好循環につながります。そういう意味で、意欲ある個人の能力を最大限生かして、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げにつなげる構造的な賃上げをしていくために、従来の政策とは異なる、そもそも三位一体の労働市場改革に取り組む必要があると思います。意欲ある個人に対するリスキリングをしっかりと行って、職務に応じてスキルが適正に評価され賃上げに反映される日本型の職務給の確立、それから、成長分野への円滑な労働移動が進められる、そういう労働市場改革に官民で連携して取り組んでいく。
それからもう一つは、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX、DX、こうした重点分野に、官の投資を呼び水にして、そして民の投資を大胆に喚起していく。そういうような形の政策をしっかり行うことによって、生産性や付加価値の向上を、的確な価格づけを通じたマークアップ率上昇で、物価上昇に負けない賃上げやコスト上昇の転嫁のできる適切な支払いをしっかり確保することで好循環をつくっていく、そういう形で内部留保に対応していきたいというふうに思います。

稲富修二 ありがとうございます。
何かを呼び水に更に民間に投資を促すというパターンはよくあって、雇用促進税制のときも、例えば一千億円の呼び水にして、そして雇用に対して、労働者に対して給料を上げるということの呼び水にしたいと言ったけれども、起こらなかった。だから、その発想は私はもう駄目なんじゃないかと思っているんです。
最後に、法人増税をしますよね。これはもう決まっている。ただ、時期は決まっていない。防衛費の五年間四十三兆円を調達するために、再来年度以降に法人増税をすることは政府として決めている。法人増税をすることと、先ほどもどなたかから御質問ありましたけれども、企業に対し投資促進をするということは、相矛盾するメッセージなのではないかと私は思うんです。
当然、増税をするわけですから、そうしたら、企業は更にため込む方に動くのであって、投資意欲はなくなるのではないか。今の増税をするということと投資促進をするということは矛盾する政策じゃないかと思うんですが、お伺いします。

後藤国務大臣 法人の負担が増えることが、一般的に見て、例えば法人の活動に対してプラスの影響を与えるものとはもちろん思いませんけれども、ただ、防衛力の強化によって、例えばサプライチェーンの維持がしっかり行われるとか、シーレーンの確保を通じた交易条件の改善だとか、抑止力強化による市場攪乱リスクの低減など、円滑な経済活動に、やはり安定的な防衛力の強化、そういう国際情勢はプラスになる、直接資する面も多いものだ、それが国の在り方全体の問題だというふうには思っています。
また、昨年末決定された与党税制改正大綱では、防衛力強化に係る財源として法人税の御負担をお願いすることになっていますけれども、その際にも、地域経済や雇用を支える中小企業への配慮を大幅に強化していまして、全法人の九四%は対象外とされているものというふうに思っています。
いずれにしても、先ほど申し上げたように、賃金の引上げ等に向けて、生産性向上、価格転嫁にしっかりと取り組むとともに、三位一体の労働市場をしっかりつくって、構造的に好循環の中で賃金が引き上げられていく、そういう経済をつくっていくということが重要だろうというふうに思います。

稲富修二 なかなかちょっと今のままでは、延長線上では、賃上げは難しいのではないか。やはり、十年間の政策の総点検をした上で、次の賃上げに向けての政策が必要じゃないかと思います。
ありがとうございました。以上で終わります。

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