■案件:
内閣官房長官松野博一君不信任決議案について
議長(額賀福志郎君) 内閣官房長官松野博一君不信任決議案を議題といたします。
提出者の趣旨弁明を許します。稲富修二君。
稲富修二 立憲民主党の稲富修二です。
私は、立憲民主党・無所属を代表して、内閣官房長官松野博一君不信任決議案について、提案の趣旨を説明します。(拍手)
まず、決議の案文を朗読します。
本院は、内閣官房長官松野博一君を信任せず。
右決議する。
以下に、本決議案を提案する理由を申し上げます。
自由民主党における派閥の政治資金パーティーの問題、裏金づくりは、疑惑の域を超えて疑獄と言えるほど、近年まれに見る異常事態となっております。特に、清和政策研究会、いわゆる安倍派は、所属する議員がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた分の収入をキックバックし、派閥と議員の政治資金収支報告書にはいずれも記載せず、当然ながら所得としての申告もせず、納税もせず、裏金づくりをしていた問題が厳しく指摘されています。派閥全体での裏金は、五年間で数億円規模に上っていると報じられております。松野博一官房長官、西村康稔経済産業大臣、高木毅国対委員長、萩生田光一政調会長、世耕弘成参院幹事長は、それぞれ多額のキックバックがあったと報じられております。政府・与党の幹部がそろって裏金を得ていたのであれば、政権そのものの正当性が疑われる事態です。
今、多くの国民は、賃金が伸び悩み、それ以上に食料品や日用品が毎月のように値上がりする中、家計のやりくりをして、生活を守るために格闘しております。中小零細企業の多くの経営者は、政府が旗を振る賃上げは必要なことと分かりつつ、従業員の賃金を上げるためにどう原資を捻出するか、頭を悩ませています。経営においては、人手不足が直撃し、仮に賃金を上げてもなかなか人が集まらず、人材確保に苦労しています。コロナ禍三年の暗く長いトンネルを抜けて、ようやく日常の経済活動が戻りながらも、コロナ禍での借入金の返済に直面している方もいらっしゃいます。これが、私の知る国民生活の景色です。
物価高と日々戦う国民にとって、また、こつこつ働いて真面目に税金を納めている国民にとって、また、従業員の賃上げに苦悩する経営者にとって、政治家の裏金づくりは想像も及ばない悪行であり、政治に対する国民の信頼は地に落ちたと言わざるを得ません。裏金づくりは、政治資金規正法違反はもちろん、脱税に当たるのではないかとの指摘もあります。派閥ぐるみで違法行為と脱税を繰り返していたとすれば、そもそも国会議員として不適格と言うべきです。
自民党は、昨年の今頃、防衛増税を決めました。言うまでもなく、正しい納税をしない政治家に増税を決める資格はありません。国民への負担増を決める一方で、自らは裏金づくりに励む政治家が許されるわけがありません。特に、内閣の要たる内閣官房長官松野博一君の責任は極めて重大です。内閣官房長官は、総理大臣を補佐するとともに、内閣の情報を内外に発信する極めて重要な役割を担っています。しかし、今、内閣の発信者として、松野官房長官は全く機能しておりません。
松野官房長官は、当初、官房長官記者会見において、安倍派の事務総長を経験していたことから、記者にキックバックの関与について質問をされた際に、この場は政府の立場としてお答えしているものと認識しており、私個人の政治活動に関わる事柄についてお答えは差し控えさせていただきますなどの回答を繰り返しました。政府の立場を盾にした、事実上の答弁拒否、説明責任の放棄にほかなりません。
業を煮やした報道各社は、松野官房長官に事実関係の説明を求める要望書を提出しました。まずは、官房長官会見でキックバックの関与について説明すること、政府の立場で難しいのであれば、定例の官房長官会見とは別に記者会見を開くように報道各社は求めましたが、結局、今現在においても説明拒否を続けております。そのため、官房長官の定例会見では、記者から、官房長官の資質を問う声が続々と上がっております。以下、幾つか紹介をいたします。共同通信より引用いたします。
官房長官は、例えば、大地震が起きた場合や北朝鮮から弾道ミサイルが発射された場合など、国民に直結する正確な情報発信を行う内閣の最重要ポストかと思います。長官御自身に疑念が生じている中、御自身で説明しない限り、国民も長官の発信に対する疑念を抱かざるを得ない状況にあります。官房長官を続投されるならば、自身の言葉でこの疑念を払拭すべきだと思いますが、この点、いかがですか。また、政府の立場として答えを控えるということでありますが、今、政治全体への不信が高まっていると思います。政府の立場としても対応すべきだと考えますが、いかがでしょうか。また、回答しない官房長官の態度は、国内外問わずに、日本政府の信頼性への悪影響を及ぼすことのリスクがあると思いますが、それを認識していますか、何か責任を感じていますかなどといった声です。これらは野党議員の発言ではありません。全て、官房長官の定例会見における記者の言葉です。松野官房長官は、記者からも完全に信用を失ってしまったわけです。このような質問を連日受ける官房長官に、政府の情報発信者としての職責が果たせるわけがありません。松野官房長官は直ちに辞任するか、総理が決断をして官房長官を交代させるべきであります。
松野官房長官は、国会においても同様の答弁拒否を繰り返しています。十二月八日に、官房長官が一千万円を超える裏金のキックバックを受け取ったと報じられた日の予算委員会においても、政府の立場から言及は差し控えるとの答弁を繰り返しております。立法府における国会の質疑においても、内外の情報を発信する定例会見においても、説明責任を放棄して、内閣の情報発信者としての機能は完全に停止しました。松野官房長官の言動は、国民の政治に対する信頼をますます失墜させております。
FNNがこの週末に実施した世論調査では、松野長官の説明に納得できますか、納得できませんかという趣旨の問いに対して、納得できるとの回答が八・九%、納得できないとの回答が八七・四%でした。国民の九割近くが松野官房長官の説明に納得していません。記者からの信頼だけでなく、国民からの信頼を失った官房長官に職務を遂行することができるのでしょうか。
政府の情報発信は、主に官房長官が担っております。国民の信頼を失った官房長官が、海外からも信頼されるはずがありません。松野官房長官がその職に居座り続ける限り、日本政府の国際的な信用も失い、国益をも大きく損ない続けると断ぜざるを得ません。岸田総理の就任以降、この二年余りで、大臣四人、副大臣二人、政務官三人、首相秘書官二人が辞任をしました。昨年、山際経済再生担当大臣は、旧統一教会との関係が相次いで指摘され、国民への十分な説明ができずに辞表を提出しました。葉梨法務大臣は、法務大臣の職務を軽んじるかのような発言が問題視され、辞表を提出しました。寺田総務大臣は、公職選挙法を所管する総務省の大臣であるにもかかわらず、自身の政治団体の政治資金の不適切な処理を指摘され、辞表を提出しました。秋葉復興大臣も、政治と金をめぐる問題で辞表を提出しました。同じ日に、差別的な発言を繰り返していた杉田総務政務官も辞表を提出されました。
今年に入ってからも、岸田首相秘書官、荒井首相秘書官、秋本外務政務官、山田文部科学政務官、柿沢法務副大臣、神田財務副大臣が辞任をしました。たった二年で、これだけの政務三役や首相秘書官が辞任しているのです。この問題は、明らかに、適材適所の人事ができていない任命権者たる岸田総理にあるのではないでしょうか。松野官房長官も、残念ながら、結局、適材適所ではなかったということであります。
物価高対策も少子化対策も経済対策も、全て決断が遅く、後手に回って批判されている岸田総理です。松野官房長官がその任にないのは明らかであります。官房長官自ら身を引くか、岸田総理は人事の過ちを認め、松野官房長官を更迭すべきです。国政の停滞は許されません。早急な決断を下すべきではないでしょうか。そもそも岸田内閣は、国民の声を聞く力も、政策を決定し遂行する能力もなく、国民の信任を失っていることが明白です。物価高対策も少子化対策も経済対策も、全て決断が遅く、後手に回り、増税か減税か、方向性も示せません。決断力がない岸田政権により、国民の生活はますます苦しくなり、内閣支持率は下がり続けています。そのさなかに、政治と金の問題が浮上しました。問題の真相を解明するどころか説明拒否を繰り返す官房長官の存在を見たとき、政治に対する不信が増大するのは当たり前です。説明責任を果たせない官房長官を替えることから、政治への信頼を取り戻す一歩目が始まるのではないでしょうか。
しかし、今回の政治と金の問題について、自民党政権の下で真相解明が進むのか甚だ疑問ですし、自民党政権の自浄作用にはとても期待できません。東京地検特捜部が捜査していると報じられていますが、我々立法府としても、政治と金の問題について真剣に議論する必要があります。是非、この機会に、政治と金の問題を根本的に解決するための法整備など、立法府としての責務を果たそうではありませんか。国民は、失われた三十年を経て、我が国が海外の成長から取り残され、国力が相対的に低下しているのを感じています。海外からの多くの観光客で観光地がにぎわっているのを喜びつつ、日本の四季折々の自然や文化に魅力があるからだけでなく、日本が安価な観光先になってしまっているからではないかとも感じています。このままでは経済大国日本の国際的な存在感が低下するとの危機感を国民も共有しています。今まさしく、来年度予算の編成、税制改正、重要政策を決定する最も重要な時期です。日本再建のためには、国政の停滞は許されません。
これまで述べてきたとおり、松野博一君は、内閣官房長官として明らかに不適格であります。岸田総理は、聞く力をまさに発揮すべきときです。そうでないならば、国民の政治への信頼を取り戻し、喫緊の内外の諸課題に対応するために、松野官房長官は直ちに辞任すべきです。本決議案に対する議員各位の賛同を心よりお願いして、趣旨弁明を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)