活動報告

国会

平成30年12月6日 本会議

動画はこちらから

案件:
■成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律案
■水道法の一部を改正する法律案

議長(大島理森君) 稲富修二君。
    〔稲富修二君登壇〕

稲富修二君 私は、国民民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました政府提出の水道法の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。(拍手)
 今国会での参議院での本法案の審議を通じて、厚労省が調べた諸外国の水道民営化の失敗事例がわずか三件だけであったこと、公共部門の民営化を推進する内閣府民間資金等活用事業推進室に水道サービス大手の社員が出向していて利益相反が疑われることなど、新たな問題が発覚をいたしました。衆議院においてさきの通常国会で審議したとしても、その後に新たな問題が発覚した以上、改めて衆議院で徹底的に審議するのは当然のことであります。
 そのため、国民民主党など野党は、本法案を衆議院の厚労委員会で審議を行うよう強く求めました。にもかかわらず、政府・与党は、本法案の問題を隠蔽するため、一方的に委員会での質疑を省略してしまいました。会期末とはいっても、厚労委員会の定例日はまだ残されております。にもかかわらず、質疑を省略し、採決を強行したのは、国会軽視の許されざる暴挙と言わざるを得ません。臭い物にふたをするために、国会審議を行わず、国会議員としての職責を果たさない政府・与党の姿勢に抗議をいたします。
 その上で、本法案について申し上げます。
 本法案には、震災への備えとなる、水道事業者等に施設の維持修繕を行うことを義務づけるといった規定が盛り込まれています。水道管の老朽化によって破断が起きないよう、維持修繕を行うことが求められており、必要な改正事項であると考えます。
 また、水道事業は主に市町村単位で経営されており、多くの事業が小規模で、経営基盤が脆弱であります。そのため、本法案のように、都道府県に水道事業者等の広域的な連携の推進役としての責務を規定し、都道府県が水道基盤強化計画を定めたり、広域的連携等推進協議会を設置できるようにする改正事項も必要不可欠であると考えます。
 しかしながら、私たちは、さきの通常国会における衆議院での審議において、いわゆるコンセッション方式の導入については、次の三点の問題があると指摘をし、反対をさせていただきました。
 一点目は、事業者が水道事業の許可を得る必要がなく、水道法上の責任の所在が不明確になることであります。二点目は、自治体職員の転籍、災害時の責任の所在や役割分担など、自治体が策定する枠組みに委ねられてしまっていること。三点目は、水道技術の技術継承を困難にし、地方公営企業の技術力、人的基盤の喪失につながるおそれがあること、また、特に、運営のほぼ全てを民間事業者が行う中で、モニタリングができるだけの知識と経験が自治体に蓄積されないといった問題があると考えております。
 また、本年は、豪雨や地震など災害が多発し、重要な生活インフラである水道も甚大な被害を受けました。コンセッション方式の導入によって、十分な災害対応が行えるのか。国民の不安は高まっております。
 現行法のもとでコンセッション方式を導入しようとした自治体もありますが、それぞれの議会で次のような意見があり、導入には至りませんでした。
 いわく、運営会社が経営破綻した場合、すぐに代替する会社はない。また、全職員転籍のため、ノウハウは市に残らず、公営に戻せない。現時点でも赤字であるのに、経営は本当に成り立つのか。あるいは、長期契約のため、官はノウハウを失い、運営会社に問題があった場合において、迅速な対応ができないのではないか。また、民間運営会社に任せて、料金や水質等に問題はないのか。このようなさまざまな声に、政府は真正面から答えるべきだと思います。
 海外において、民営化した又はコンセッション方式を導入した水道事業を再び公営に戻している事例が近年増加しております。そういった最新事例が本法案の検討過程において全く考慮されていないことが明らかになりました。十分な海外事例の調査も行わないままに、多くの水道事業者が必要ないと考えているコンセッション方式を推し進めるのは、一体何のためなのか。
 コンセッション方式を導入すれば民間の効率的経営が必ず導入できるというのは幻想であります。例えば、空港のように、観光客がふえ利用客がふえる中で、民間事業者が経営ノウハウを活用し、場合によっては、民間事業者の経営がだめな場合は他の民間事業者がかわり得るような、そういった市場環境があればうまくいくかもしれません。しかし、人口減少という構造問題を抱え、明らかに水需要が減る日本で、水道事業にコンセッション方式を導入して、うまくいくとは思えません。
 結局のところ、もうかると思われる人口集中地域に限られるか、運営のために料金を上げるか、海外の巨大水メジャーに席巻されるということになるのではないでしょうか。
 コンセッション方式が導入されることにより、我が国がこれまで築き上げてきた、世界に誇る水道事業が世界に売られてしまうおそれのある、このような法律案を認めることはできません。
 立法府である国会は、政府から提出された法律案について、唯々諾々と賛否の結論を出せばよいというわけではないはずであります。国会は、国民の代表者たる国会議員が、与野党を問わず、政府をただしていくことにより議論を深め、結論を出していく場所であります。
 しかし、残念ながら、十分な審議を経ることなく採決をされるという場面は、わずかこの一年で何度見てきたかわかりません。カジノ法でも、入管法改正でも、強行採決が繰り返されてまいりました。
 政府・与党におかれては、野党の批判にたえられない、あるいはたえる自信のない法律を量産することはやめていただきたいのであります。国会が行政府の下請になり、討論や採決を単なる儀式におとしめてはなりません。
 本法案は、命と生活を支える水道の基盤を壊しかねない法案です。そのため、参議院の審議を通じ、国民の不安が解消されるどころか、逆に高まっております。
 安倍政権が、結論ありきで数の力で突き進むのは一体誰のためなのか、どちらを向いて仕事をされているのか、この基本点が我々と全く異なります。
 私たち国民民主党は、生活者の立場から、命と生活を支える水の安全、安心を守ってまいります。そのために、本法案には断固反対であることを改めて申し述べ、討論を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

PAGE TOP