■案件:政治資金問題、所得税等の定額減税等について
■いなとみ修二 主な質疑内容:
(1)政治資金問題
(2)所得税等の定額減税
(3)政府税制調査会の中期答申(「わが国税制の現状と課題-令和時代の構造変化と税制のあり方-」
(令和5年6月30日))において示された「十分性」と賃上げ促進税制等の減税措置との整合性
(4)子育て世代に対する住宅ローン減税拡充措置の政策目的
稲富修二 立憲民主党の稲富でございます。
まず、当委員会において、二月十六日に、確定申告初日に質疑がある際に、一度大臣にも今の確定申告の現場に行ってみてはどうかという御提案が我々からありました。また、予算委員会においても同じようなことが言われたかと思います。その際、大臣は御地元の方で、税理士相談会でしたでしょうか、足を運ばれたということでございましたけれども、その後、確定申告の現場、あるいはその現場からの報告、声など、何かお聞きでしょうか。
鈴木国務大臣 確定申告が始まった十六日以降、税務署に私は直接伺っておりませんが、先ほど稲富先生から御指摘があった、地元での申告無料相談でありますとか、それから、これまでも複数箇所、税務署を視察をしておりまして、現場で対応しております職員の皆さんのお話を伺い、また御苦労も聞いているところであります。今回、政治と政治資金に関わる問題で、納税者の皆さんと接している現場の職員の皆さんに大変負担がかかっているということについては、内心本当にじくじたる思いをしているところでございます。そうした現場の方のお気持ちというものもしっかりと受け止めながら、納税者の方々、真面目に申告納税している方々が不公平感というものを感じることがないような丁寧な対応、そうしたものに心がけてまいりたいと思っています。
稲富修二 是非、ネット上でも様々な書き込みがあったり、御意見があります。含めて、是非、大臣におかれては、現場の声をずっと受け止めていただいて、行政に生かしていただきたいと思います。重く受け止めて、是非よろしくお願いいたします。そこで、今回、確定申告のことが、二月十六日から始まったということで、多くの話題になります。しかし、一方で、給与所得者というのは、もう年末にある意味納税額を確定しているということで、実は、納税者というのは、確定申告の方とともに、日々、毎月、勤務の方も当然ながら納税している。そして、御存じのとおり、申告納税とはいいながらも、各会社においては、ある意味納税者を代行する形で納税をしているわけでございます。したがって、給与所得者においては、納税者が令和三年でいくと四千五百万人いる、あるいは源泉徴収義務者は三百六十万件あるということで、確定申告の方々とともに、日々納税事務に当たられている方、当然一円から、これはゆるがせにできない業務をしているわけでございまして、併せて是非その点も御理解いただいた上で、現場の声を聞いてもらいたいというふうに思います。さて、裏金の問題なんですけれども、改めてですけれども、課税の原則についてなんですが、やはり公平ということを、大臣もよくおっしゃるし、国税庁の方もよくおっしゃる。伺いたいのは、大臣の考える公平とは何かということを是非お伺いしたいと思います。
鈴木国務大臣 御指摘の租税原則におけます公平には、経済力が同等の人々は等しく負担をすべきであるという水平的な公平、それから、大きな経済力を持つ人はより多く負担すべきであるという垂直的公平などの考え方がありまして、公平、中立、簡素の租税原則の中でも、税制に対する国民の信頼の基礎として最も公平ということが重要なものであると考えております。今般の政治資金をめぐる問題に関しましては、国民の皆さんから厳しい指摘があることを、私も身にしみて感じるところであります。執行段階におけます公平性、この観点からも、法令等にのっとりまして適切に取り扱われる、一般の国民の納税者の方も、政治家であれ、全く納税については同等に公平に扱われる、こういうことが大切であると考えています。
稲富修二 ありがとうございます。
もちろん、三原則、いろいろありますけれども、やはり最初に公平が来るということで、私も、ある意味、ここをどうするか、この公平感をいかに国民の皆さんに抱いていただくか。それは、私なりに言えば納得感ということになろうかと思います。いわば、どうすれば公平と感じていただけるのかということが一番難しい。そして、それが一番大事であると私も思うんですね。その意味でいうと、今回、所得税法の質疑、六十九兆四千四百億円という、これだけのお金のことに関する法案を扱うということであれば、本来であれば、この税法の審議の前に、様々な裏金の問題の政治責任も含めて終わった後で、私は、国民にこういう場で、国会で審議をすべきだと思うんですね。残念ながら、この問題がいわば解決しない中でこの審議をしなきゃいけないということを、やはり重く受け止めなきゃいけないと思うんです。多くの国民の皆さんに、税金を預かるということをこの場で審議をし、一方で、政治家の責任はいまだ宙に浮いたままということ、このことをやはり重く受け止めなきゃいけないというふうに思います。そこで、公平ということで考えたときに、この裏金問題というのは二つの側面から、私は違法性の疑いがあると思っています。一つは政治資金規正法違反、二つは納税を意図的に回避した可能性がある、この二つです。これはるる、当委員会でも予算委員会でも指摘があります。一つ目の政治資金規正法違反については、これはもちろん納得しているわけではありませんが、検察によって捜査が進められた。しかし、二つ目の税務のことに関しては、裏金と税務の話というのは、まだ税務調査が行われていないということも含めて十二分に審議が尽くされていない。要するに、この二つ目の問題は、まさにこの当委員会でやらなきゃいけないことだと思います。
そこで、基本的なことを少し確認をさせてください。今回の裏金のことで、自民党さんの調査報告、聞き取り調査報告の中では、政治活動以外には使っていないということでございまして、したがって、それは帰属は政治団体にある、あるいは政治活動にあるから、それは課税の対象ではないということで納税をしない、こういう理屈で進んでいるわけですよね。一方で、しかし、納税した方がいいんじゃないかという御意見も一部報道でもありました。質問は、要は、自民党の報告書には政治活動以外には使っていないと言っている、書いてある。しかし、例えばですけれども、いや、税務調査がもしかして来るかもしれない、あるいは世論の批判が大きくなるかもしれないということで、本来は政治活動だけれども、やはりそのことを踏まえて、これは個人の所得として修正で申告をするということが可能なのかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
星屋政府参考人 お答え申し上げます。
申告納税制度の下では、まずは、納税者において、御自身の収入や必要経費を計算し、申告していただくこととなります。その上で、一般論で申し上げますと、納税者におきまして収入や必要経費を再計算した結果、当初提出した申告書と異なる税額となった場合には、修正申告により申告内容を訂正することができるということでございます。
稲富修二 つまり、修正申告できるということですよね。報告書には、政治活動で使っていた、したがって課税関係は発生しないとは言っているけれども、要は、個人が修正申告しようと思えば申告納税制度の下ではできるということ、そういうことだと思います。そして、次に、じゃ、修正申告する場合には何年まで遡れますか。
星屋政府参考人 お答え申し上げます。
一般論として申し上げますと、国税通則法上、国税当局が更正処分を行うことができる期限は、原則として法定申告期限から五年を経過する日とされております。その上で、国税通則法上、納税者は修正申告書を更正処分を受けるまでは提出することができることとされております。このため、修正申告書を提出できる期間は、原則として、更正処分ができる期限と同じく、法定申告期限から五年を経過する日ということでございます。
稲富修二 つまり、五年遡って修正申告ができるということかと思います。そこで、次の質問は、仮に、不正の行為によって過少に税金をこれまで納めてきたという場合は、何年まで遡って税務調査あるいは更正決定をすることができるのかお伺いします。
星屋政府参考人 お答え申し上げます。
国税通則法上、国税当局が更正処分を行うことができる期限は、先ほど申し上げましたように、原則として法定申告期限から五年を経過する日とされております。その一方で、仮に税務調査が行われ、偽りその他不正の行為により税額を免れたと判断された場合等につきましては、法定申告期限から七年を経過する日まで更正処分を行うことができ、この場合、税務調査の対象期間は過去七年分となるということでございます。
稲富修二 つまり、原則五年なんだけれども、これは資料の一ページ目なんですけれども、偽りその他不正の行為によってその全部若しくは一部の税金を逃れる行為がある場合には、七年遡れるということになっているわけです。これまで、例えば自民党の聞き取り調査あるいは各人のアンケートを見ると、全て五年のことしか書いていなくて、いわば七年間はないわけです。したがって、偽りその他かどうかということは分からないまま実は報告書が出されていて、五年だけの報告書になっているんですね。政治資金規正法の違反は、確かに時効は五年。だけれども、課税、あるいは脱税、偽りその他に関して言えば、七年なんですね。とすれば、これは、今まで自民党が報告した、あるいは調査をやったという五年間というのは不十分と言わざるを得ないんですよ。そうすると、七年間ちゃんと誰かが調査しなきゃいけなくて、誰かがそのことをやはり調べなきゃいけない。となれば、私は、ここで、やはり、もうやることは二つしかなくて、自民党にもう一回調査してもらうか、七年分、そしてもう一つは、国税庁に税務調査に入ってもらうか、これしかないと思うんですよ。誰も七年分やっていないんですよ、調査していないんですよ。是非、大臣におかれては、先ほど来、江田さんのときも、国税庁には税務調査ということは言えない、立場上言えないということでしたけれども、やはり、税をつかさどる大臣として、そして国民に税をお願いをする立場として、党内の主要なポストの自民党員として、やはり調査五年じゃ不十分だ、不正の場合は七年なんだということを是非党内で言っていただけませんか。
鈴木国務大臣 五年と七年のことにつきましての御指摘はよく理解をいたしました。そうでありますけれども、私は今閣内におりまして、今回の調査やアンケートの実施につきましても、全く関わりを持つ立場にはないわけでございますので、このことについて何か、こうするべきだとかそういうことについては、私から申し上げるのは適当ではないと思っております。
稲富修二 今回、公平、要するに、国民の納得感を得るためには、私は、大臣に何らかのアクションというか、動いてほしいんですよね。例えば、冒頭申し上げましたように、確かに、一度御地元には行かれた、しかし、税務相談あるいは確定申告の現場に足を運んでほしい、あるいは、今言ったように、何らかの動きを是非出してほしいんですよね。そうじゃないと、国民は納得できないんですよ。いわば、それは公平性を担保できないということなんですよ、私からすれば。じゃないと、恐らく、この不信感は本当に大きくなるばかりで、最初に言った三原則の最初の公平性を私は守れないと思います、このままだと。ということを申し上げ、そして、是非大臣には何らかの動きを見せてほしいんですよ。もちろん、立場はあるし、限界はあるかもしれませんけれども、是非何らかの動きを見せていただいて、納税者に分かるような形で、納得感を得られるような形で、公平性を担保するように大臣にも動いていただきたいと思うんですけれども、もう一度お願いできませんか。
鈴木国務大臣 先生のおっしゃっている気持ちはよく分かるところでございます。よく国税庁等にもいろいろな意見が電話等で寄せられているわけでございますので、そういうものをしっかりと把握をしてまいりたい、そういうものを今後の国税のいろいろなやり方に生かしてもらいたい、独立的に、独自的に生かしてもらいたい、そう思っておりますし、私自身、様々な声をしっかり受け止めたいと思います。
稲富修二 是非、公平ということを実現するために、これはもう本当に与野党関係ありませんので、是非取り組んでいただきたいと思います。それでは、一つ、政治団体について、質問を飛ばして伺います。政治団体を解散した場合に、その残金は誰に帰属をするのかということと、その残金は課税されるのかということ、これは事務方から端的にお答えいただければと思います。
笠置政府参考人 私からは、政治資金規正法の関係でお答えをいたします。政治資金規正法におきましては、解散した政治団体の残余財産の取扱いについて、特段の定めはないところでございます。
星屋政府参考人 お答え申し上げます。
政治団体を解散した場合の残余財産の課税関係につきましては、その残余財産の帰属先に応じて異なるため、一概に申し上げることは困難でございますが、その上で、一般論として申し上げますと、残余財産が例えば他の政治団体に帰属する場合には、政治団体は、法人税法上、公益法人等又は人格のない社団等に該当するところ、これらにつきましては、収益事業から生ずる所得について、法人税の課税関係が生ずることとされておりますが、一般的には、残余財産の分配を受ける行為は、法人税法上の収益事業のいずれにも該当しないため、受け取った政治団体において、法人税の課税関係は生じないということでございます。他方、残余財産が例えば政治家個人に帰属する場合には、一般的には、一時所得として所得税の課税関係が生ずることとなります。いずれにいたしましても、国税当局といたしましては、個々の事実関係に基づき、法令等に照らし、適正に取り扱うこととしております。
稲富修二 ありがとうございます。
裏金が政治団体に帰属するか個人に帰属するか、今、解散した場合にどうなるのかというのは、非常に、私からすればすごく曖昧で、ここはやはりちゃんとしなきゃいけないというふうに思います。今のままでいくと、政治活動と言い張れば、これは課税対象にならないということで、非常に私は不都合だなと思います。ここは整理する必要があると強く思います。続きまして、定額減税について伺います。大臣、税の基本的な機能についてどう認識をされているか、お伺いをいたします。
鈴木国務大臣 租税の基本的な役割といたしましては、公的サービスの財源を調達する財源調達機能、所得や資産の再分配を行う所得再分配機能、景気の変化による税収の増減に伴い、自動的に景気変動を小さくする経済安定化機能が挙げられるものと承知をしております。その三つが主な機能であると思います。
稲富修二 それで、定額減税なんですけれども、昨年の国会で、岸田総理が、国民への還元が経済対策の柱として力強く打ち出されました。しかし、この定額減税について、還元の意味を問われた大臣が、減税における還元ということを言っているわけであって、その還元は、財源論でなく、税金を御負担いただいている国民にどのような配慮を行うかという観点で講じ得るものと御答弁されています。これは、財源論ではなくと御答弁されておりますが、財源論のない税の議論って、私はあり得るのかなと正直思いまして、財源を考えなくていいんだったら、何ぼでも減税もできますし、やりたいこと、何でもできると思うんですよ。財源論でなく、国民への配慮で減税を行うという、ちょっと私、これまで聞いたことのないような減税なんですね。先ほどおっしゃっていただいたように、基本的機能として財源確保があって、残り二つがあるということから考えれば、今回の減税というのはどういう機能を発揮したということになるんですか。
鈴木国務大臣 今般の定額減税を実施するこの令和六年度だけを見ますと、所得税収が約二・三兆円の減収となっていることから、減税後の所得税の財源調達機能が一時的に低下することになることは事実でありますが、定額減税は所得の低い方々ほど高い割合の減税となるため、所得再分配機能が高まるもの、そのように考えております。今回の定額減税によって、先ほど申し上げた三つの基本的な機能のうち、財源調達機能と所得再分配機能が働く、こう考えております。
稲富修二 いや、大臣、財源論ではないとおっしゃったので、それはちょっと私はおかしいと思います、財源論ではないとおっしゃったから。要するに、所得再分配なんだということだと思うんですね。そうすると、しかし、普通、所得再分配というのは、所得増税をします、そして所得の再分配をしますという話は分かるんですよ。しかし、今回、確かに定額減税をやって、その他の給付も含めて、低所得者の方々も含めて分配をするということなんですけれども、だったら、所得再分配だったら、これは一年限りやるというのも、またこれはおかしい話なんですよ。その一回こっきりで所得再分配をやるということですか。いや、普通であれば、所得再分配、これは元々岸田政権が言っていたことなんですよ、所得再分配をやりますと。そのために所得税は、私は分からないですけれども、所得税を上げるのか、金融所得課税を上げるのか、当初はそう言っていたんですよ。だから、そのラインに立てば、所得再分配というのはそうだなと思うんですよ。ただ、今回、一回こっきりだとすれば、それは、所得再分配と言っていることはどうなのかということを思うんですよ。大臣、もう一度御答弁いただけないですか。
鈴木国務大臣 今回行います定額減税は、私どもとして、今年一回のものである、そのように考えているところであります。そもそも、今般の定額減税は、一義的には、賃金上昇が物価高に追いついていないことによります国民の負担を緩和をして、賃上げと相まってデフレマインドの払拭につなげること、これを目的としているものでございます。いずれにしても、実施は一回ということで、複数回は想定はしていないところであります。
稲富修二 つまり、原則というか、基本的なところの機能を踏まえていないというふうに思うわけです、今のお話を聞くと。所得再分配なんだけれども一回こっきりということになります。だから、後でもう一回、午後質疑をさせていただきますけれども、もう少しこの定額減税について午後質疑をさせていただきたいと思います。終わります。ありがとうございました。
津島委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後一時開議
津島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。稲富修二君。
稲富修二 午後もよろしくお願いします。大臣、九番のところ、ちょっと質問させていただきます。今回の定額減税のことなんですけれども、所得税の税収の上振れに相当する額を減税するということであれば、消費税も、令和二年から四年まで、約二・一兆円上振れています。その分を国民への配慮として給付する、あるいは減税するということも考えられると思いますが、その点はいかがですか。
鈴木国務大臣 消費税収でございますが、これは近年増加の傾向にありますけれども、総理も述べておりますが、消費税は、急速な高齢化に伴い年々増加する社会保障給付費の財源確保が課題となる中で、全世代型社会保障制度を支える重要な財源と位置づけられていることから、政府としては、既に、国、地方合計で一兆円を超える減収につながっております軽減税率の引下げを行うことは適当ではないと考えているところでございます。
稲富修二 ありがとうございます。
つまり、財源論なんですよ、これは。消費税に関して問うと、財源論で、これは減税できないという話になり、所得税になったら、いや、これは財源論ではなく国民への配慮だ、減税するんだという話になるわけです。すなわち、冒頭申し上げましたように、財源論なんですよ、やはり。それは基本的機能の最初なんですから、そこから逃げられないわけです。だから、実は、今回の給付金と定額減税一体措置というのは物すごく財源を使っていまして、これだけ多くの減税と給付を使いながら、いま一つ評判が芳しくないという理由の一つは、やはり、そもそも一体何なのかという、基本原理にのっとっていないといいますか、そこにあるんじゃないか、簡単に言えば、思いつきなんじゃないかというところで、これは、これだけの財源を使いながらも評判が芳しくないんじゃないかと思います。二枚目の資料で、減税の部分は、私が聞いている範囲では三・五兆円、そして、箱の部分をトータルすれば二・二兆円、元々の給付の三万円を足すと、〇・五兆円で、六・二兆円もの定額減税プラス給付金のスキームなんですよね。ただし、私、一点、このことがすごく今回措置としてよかったと思うことは、これはまさに給付つき税額控除なんですよね、私からすれば。これは、消費税が、それこそ、野田総理のときに消費税が上がるときに、その負担感をどう和らげるかというときに、給付つき税額控除をどうするのか、我々はそれを進める、いや、それではなくて軽減税率を入れる、そこは意見が違ってそうなっている。でも、これは、給付と要するに減税を組み合わせた、まさに給付つき税額控除なんですよね。
したがって、これからどういう、あるいは給付と減税という組合せが、今回たまたまこうなるのか、今後、例えば減税をすることと給付が組み合わさっていくということになれば、このスキームしかないんですよね。とすれば、今回の一体措置の中での事務コストはどうだったのか、あるいはその課題は何だったのかということを考えることは、私、非常に次につながることだと思うんですよ。そういう意味で、改めて、この事務コストはどうなのか、実務上の課題は何なのかということを御答弁いただければと思います。
鈴木国務大臣 定額減税と給付の一体措置、これの実務上の課題ということでありますけれども、今回の定額減税及び給付措置に当たっては、各企業や自治体の事務の実態や実施上の課題等をできるだけ把握をして対応するよう努めているところです。具体的には、定額減税につきましては、現在御審議いただいている法案について、成立をしていただいた場合、その成立から減税の開始までの、六月までの期間が短いことが課題となっております。このため、企業や自治体が早期に準備に着手できますように、パンフレットやQアンドA等を迅速に策定、公表してきたところであります。そして、給付金につきましては、対象者の特定や給付額の決定、その後の申請の受付や審査、振り込みに係る事務負担が実務上の課題と承知をしております。非課税世帯への給付につきましては、これまで複数回にわたり実施してきており、そのシステムやノウハウを活用でき、あわせて、簡素、迅速な給付につなげるためのデジタル技術の活用など執行面での工夫等を行っているところと承知をいたしております。このような実務上の課題に対しまして、引き続き丁寧な対応をしてまいりたいと考えております。
稲富修二 ありがとうございます。給付つき税額控除の課題は、当時は番号と、あと所得捕捉の問題と、あと実務上のコストが高いということでした。これを乗り越えられるのであれば、これは次につながるスキームだと私は思いますので、是非、その上でも、この課題について洗いざらいレビューしていただきたいなと思います。続きまして、賃上げ促進税制について伺います。これは先ほど櫻井さんがおっしゃっていただいたので、私からは一点だけ。今回よかったことは、財務省自身がレビューをしていただいて、十年たってこれは効果があるのかということを検証されたというのは、すごく私はよかったなと実は思いました。その他の租特に関してはそんなことは一切ないわけで、今回そうやってレビューをして、結果として、先ほど櫻井さんもおっしゃいましたけれども、書いてあるのはほとんど効果が見られなかったということなので、そうであれば本来はやめるということに行かなきゃいけないのに、効果がなかったから更に深掘りするというふうになるというのは、私はちょっと理解できないですね。
そこで、伺います。政府税調の報告書、去年出されましたけれども、その中では、十分性という言葉を強調されて、三つの原則に加えて十分性が必要なんだ、これからは必要だということをおっしゃっています。そうやって考えれば、一・三兆円の減税をする、その他も減税をする、そして検証も十分に行われないという中で、政府が掲げる、あるいは掲げようとしているこの十分性ということをやはり考えなきゃいけないんじゃないかと思いますけれども、そこを考えた上での今回の減税のオンパレードなのか、その辺りを、十分性をどう考えているのかということをお伺いしたいと思います。
鈴木国務大臣 御指摘のとおりに、政府税制調査会の中間答申におきまして、現在世代と将来世代の間の負担のバランスの確保の観点から、租税の十分性に配慮することは、次の世代に自らの税金をどう使うかの選択肢をつなぐことでもあると述べられているところであります。この租税の十分性との観点に関しましては、令和六年度税制改正においても十分留意しております。例えば、戦略分野国内促進税制やイノベーションボックス税制については、税制改正プロセスにおいて具体的な財源を確保しているところであります。他方、賃上げ促進税制の強化に関しては具体的な財源を確保しておりませんが、これは、賃上げと定額減税等を組み合わせることで、今年、官民挙げての物価高を上回る所得の実現に向け、これを力強く後押ししていくとの政府の方針を反映したものであります。御指摘のとおりに、我が国の極めて厳しい財政事情に鑑みますと、租税の十分性についてはこれまで以上に重要になっていると認識をいたしております。今後とも、この点を十分に意識しながら、租税特別措置の不断の見直し、これは重要なことでありますので、引き続き取り組んでいきたいと思っております。
稲富修二 今でも十分性を十分に考えているということであれば、余りこれは、十分性がいわば三つの基本機能に足されて物すごく重要なんだということを表しても、今の段階でも十分にそれが考慮されているとすれば、私は、原則としては全然機能していないと言わざるを得ないんですよね。次に移ります。
子育て世代に対する住宅ローン減税についてですが、これを見たときに、同じですけれども、即座に思い浮かぶのは、今、首都圏でも新築マンションの平均価格が上がっている。私、地元福岡でも物すごく上がっています。とすれば、減税したらもっと上がるんじゃないかということ。結果として、子育て世帯の所得格差が拡大するんじゃないか、あるいは、これが実際活用されるのはほとんど都市圏じゃないか、いわば都市と地方の格差がより拡大するんじゃないか、そもそも子育て世代への経済的支援になるかどうか、政策目的が曖昧なんじゃないかとか、なぜ持家世帯だけがこんな優遇されるのかとか、いろいろなことを思うわけです。一体これは何のためにやるんですか。改めて目的を伺いたいと思います。
鈴木国務大臣 まず政策目的から申し上げますと、今回の税制改正では、令和七年度税制改正において結論を得るとされている子育て支援税制の先行対応として、住宅ローン控除について、子育て世帯等に対する借入限度額の上乗せを行うこととしたところです。この措置は、十八歳以下の子供を持つ世帯のほか、これから子供を持つことが想定される若年夫婦世帯についても対象としておりまして、こうした世帯の住宅取得を支援することを通じて少子化対策や子育て支援につなげていくこと、これを目的としているものであります。また、稲富先生から、住宅価格への悪影響、価格上昇につながるのではないか、こういう御指摘もございました。近年の住宅価格の上昇の背景には、建設資材の値上がりや人手不足による建設コストの高騰など様々な要因があるものと承知をしておりますが、加えて、今回の措置が、子育て世帯等に限って控除額の上乗せを行うものであること、対象を環境性能の高い住宅に限定をしていることを踏まえますと、必ずしも住宅価格の押し上げにつながるものとは考えておりません。そして、格差の拡大についてもお触れになりましたが、住宅ローン控除は住宅購入に係る負担に対する支援になっておりますが、住宅を購入されない方々への支援としては、国土交通省において、例えば公営住宅でありますとか住宅セーフティーネット制度などを通じた支援を行っております。政策全体を通じまして、住宅に係る様々なニーズに応えていくことが重要である、そういうふうに考えております。
稲富修二 どうもありがとうございました。終わります。