案件:
■所有者不明土地等に関する改正法案について
義家委員長 次に、稲富修二君。
稲富修二 立憲民主党の稲富でございます。今日は、参考人の皆様、本当にありがとうございました。
まず、四人の参考人の皆様にお伺いをいたします。
私は福岡なんですけれども、どちらかというと都市部なんですね。同じ所有者不明土地といっても、都市部とそうでないところは随分と対応が違うかと思います。その点について、この法案、あるいはこの対応についてどのように考えればいいのか、是非御意見をいただければと思います。
山野目参考人 ありがとうございます。
所有者が不明であるという事態、それから土地の管理が不全であるという事態を抽象的に取り上げて対策を講じようという提案を盛り込んでいるのが、今般の民法等の一部改正の法律案でございます。
民事の法律の特性から申しまして、国土交通省が進めている土地政策とは性格が異なりますから、都市部と山村部、それから大都市圏か地方であるかといったようなことの振り分けの観点を入れて、とりわけ法文の規定の文言をたてつけるというようなことはされてございません。
しかしながら、この法律に基づいて、当然、その進められていく施策の実効性を確保する上では、そういうことを意識しておかなければいけないということは当然でございます。
一言で土地の管理不全といいますけれども、管理不全って何ですか、あなた、管理不全というのを見たことありますかというふうに問われたときに、その具体像をイメージしますと、例えば、ごみの散らかしが放置されている、雑草が繁茂している、このあたりまでは多分都会でも山村でもあるんだろうと思います。樹木の管理がよろしくないといったあたりになってきますと、都会にもあるかもしれませんけれども、どちらかというと山村部が多い。反面、建物の施錠がきちっとされていないので危なくて困りますよねというのは都市部だと思いますね。また反面、鳥獣被害みたいなことになってきますと、これは山村部の方々を大変悩ませている事象です。
いずれも、今回御提示申し上げている民法の法文にしたときには、管理が不全であるために他人の権利を侵害するおそれという抽象的な文言に収められますけれども、運用に当たる裁判所の各庁が、その事案の特性を見ながら適切な管理人を選任してくれるなど、対応してくれることだろうというふうに期待いたします。
議員お尋ねの所有者不明ということに関しても、都会に存在する不動産、建物なんかも含めて申しますと、都会でお亡くなりになった方の相続人は、実は地方にいらっしゃる、あるいはその逆であるかもしれないというような仕方で、居住が分散して地域コミュニティーが脆弱になっているということを背景とする所有者不明土地問題があるかもしれません。
他方、地方に参りますと、東日本大震災の場合が典型的でございますけれども、高台の権利関係が不明であったという事象がたくさんあって、あれに悩まされました。あれは神戸の震災の際にはなかった事象でありまして、高台の所有者不明のため、災害復興住宅が三陸において建てることができませんでした。
高台というのは、何かとても響きがよくて、一見、耳から入ってくる、あるいは、漢字の言葉を見ると、何かすてきなところであるような印象すらありますけれども、現地に行ってみれば、それは、小高い丘の、ただ草ぼうぼうの場所であります。誰も今まで関心を持たなかった土地が急に災害復興住宅の適地として注目を浴びる、しかし、長い間にわたって、明治、大正の時期から権利関係が投げやりにされてきた。これが地方で、都会に全くないわけではありませんけれども、地方で見かける光景であります。
土地が、あるときに、もて期がやってきたというふうに申し上げればよろしいでしょうか。それまで全然もてなかった土地が、震災という全く不幸な出来事でありますけれども、それをきっかけに突然もて始めて、あなたの権利関係はどうなのと言われても、長年放っておいて今更何ですか、それはと。災害のときに適地だというなら、あらかじめきちっとその権利関係を追って相続登記をするなどフォローしておくべきだったのではありませんかというお話になるものでありまして、まさに今般、法律案にその観点の施策を盛り込んでいるところでございます。
今川参考人 お答えします。
今回の所有者不明土地問題というのは、今、山野目参考人もおっしゃいましたとおり、都市部と地方で基本的には変わらないとは思います。
ただ、地方は人口減が進んでおります。そして、山林や農地が多いということで、やはり相続登記未了の案件が増えている、多いと思われます。それから、管理もしにくい、流通も乗せにくいということで、所有者不明土地の問題は、感覚ですけれども、地方の方がより深刻なのではないかというふうに思います。
それと、地方の山林等ですと、一般の方はちょっと勘違いがありまして、相続登記をなぜしないか、相続したくないからという勘違いがありまして、登記をしてもしなくても相続をしておるわけでありますけれども、登記をしないことによって、二次相続、三次相続が起きることによって、更に問題が深まるということもちゃんと理解をしていただかなければならないなというふうに考えております。
以上です。
吉原参考人 ありがとうございます。大変本質的な問いをいただいたなと思っています。
日本のこの今の都市部からの人口流出、コロナで少し傾向が変わっていると思いますけれども、都市部と中山間地などによって土地に対する感覚、金銭感覚とかあるいは権利の意識というものが大きく異なると思います。
土地というのは、ふだんは負担に思っていても、いざ手放すとなると、いろいろなしがらみがあったり、実は思い入れがあったり、親族の目も気になったりして、次の一歩が踏み出しづらいというものもあります、地域の目もあったりして。そういうのがやはり地域性というものが出てくると思います。
あと、問題の構造は同じなんですけれども、都会の場合はマンション問題がこれから非常に、同じ問題が発生してくると思います。
それから、こうした所有者不明という構造の問題に対応する際の弁護士などの実務家の方の声を聞いても、例えば立入りということの感覚が随分違うと聞きます。都会の場合は、立ち入るんだとなるとすごく権利意識が喚起されるわけですけれども、田舎で広大で空き家がぽつんぽつんとあるような状況で立入りという中での感覚というものも違うんだと。当然、役所の方々の感覚も違うでしょうから、そういうところに配慮しながら、民法では原則を定め、そして地域性に応じた運用というものを地域ごとに実践していけるようにするということが大事ではないかと思います。
石田参考人 私も皆さんと同じように、都市部と地方部という区別というのは必要ないと思います。そうではなくて、やはり都市部、地方部それぞれに独自の再生プランといいますか具体的な活用プランですね、これが異なる場合があるというだけの問題だと思います。
ただし、一つ大きな問題としましては、山林という問題がありますね。日本の六八%が山林だと言われておりますが、これは本当に今物すごい勢いで細分化されてきまして、境界確定なんてとてもできない、あるいは立入りもできないような区画がいっぱいありまして、そこに所有権がついております。この中で非常に、外国人の所有率が今物すごく増えている。現場を見たわけではなく、ただ買っているだけの話なんですけれども。この山林に関しては、やはり所有と活用というものをしっかりとこれから分けざるを得ないと思います。これは災害対策も含めてです。
これは私のただの私見でございますが、山林に関しては全て国家の方でそこの所有権というのはひとつ確立していただきまして、境界とかそういったことは関係なく、活用に関して、民間に広く活用できるように、放置がなくなるような、活用ができるような施策をお願いしたいと思います。
稲富修二 ありがとうございます。
また、続きまして、四人の参考人の皆様にお伺いします。在留外国人についてです。
相続などに際し、身分関係の証明が困難なケースがございます。ちょっと、もし答えられればということで教えていただければと思います。
二〇一二年七月に外国人登録法が廃止されまして、一定の在留外国人に外国人住民票が創設されましたが、身分関係については記載がされていない。このことを放置したままで相続登記を義務化するということに関しては、やはり問題があるのではないかということでございます。
今現在、在留外国人は三百万人に達さんというところ、そして、永住者は八十万人いらっしゃるという現状でございます。何かそれに対する御示唆があれば、いただければと思います。
山野目参考人 御質疑ありがとうございます。
不動産登記制度と国際化という課題で物を見てアプローチしたときに、今議員御示唆いただきましたとおり、幾つか解決しなければならない問題がございます。
もちろん、お話にありましたような外国人住民票の制度の創設以降の運用経過を踏まえて、今後とも施策の見直しをしていくことが肝要でございますけれども、ひとまず、本日御審議をいただいている法律案ないしその関連のことで、二つのことを申し上げますと、一つは、法律案に既に盛り込んである内容のことでございまして、外国におられる方で連絡がうまく取れないという方については、その方が登記名義人になっているときには、国内の連絡先を登記してもらう、これは所有権の登記についての措置として提案してございますけれども、そういうことを講じていて、所有者探索の過程など、あるいは御指摘のあった相続登記の履践の過程などにおいて問題になる際にも、関連するコミュニケーションが今まで以上にうまくいくようにということの観点からの施策を提案しているところでございます。
もう一つは、外国人の住所がどこにあるかという問題につきましては、日本の戸籍ないしは住民票の書類だけでは公的には容易に確認をすることができない場合もございます。外国政府が関与して作成した書類によって外国人の住所を確認しなければならないことになりますけれども、これについては、運用がこれまで合理的なものであったかどうかを、法制審議会の審議の過程で一旦点検をし、問題点を洗い出し、今後の運用に生かしていくということが現在法務省において検討されてきたし、今後も検討されていくだろうというふうに見通しております。
これは、運用として措置すべき事項でございますので、法律案のこの条文にこれですという形に、目に見える仕方に必ずしもなっていないかもしれませんけれども、政府の決意としてはそういうふうな見方で臨んでいるという理解をしておりますから、またその点どうなんだということは、政府をただしていただければありがたいと感じます。
今川参考人 外国人の方の住民票の登録制度については、先生が御指摘のとおりの問題もあると思っています。
私、司法書士の立場で、今回、住所、氏名の変更登記も義務化となりました。そして、経過措置によって、既に名義人となっている者で住所変更登記がまだ未了のものにも適用されるということになります。
そうすると、外国人の方の住所変更、氏名変更等をするときには、外国人住民票制度が導入される前の外国人登録の情報というものも、例えば、プライバシーに配慮はしながらも、我々資格者がその確認をできるようにしていただきたいというのは、要望としてあります。
なぜならば、法務局に対して、住所の変更を証する資料というものを添付しなければなりませんので、その交付の在り方についても検討はしていただいた方がいいかなというふうに思っております。
以上です。
吉原参考人 ありがとうございます。
基本的には、内外無差別で、先ほども少しお話ありましたけれども、ここは経済活動の対象としてはいけないというところについては、外国人であろうと日本人であろうと、売買の状況を国が把握をしておく、実態調査をするという基本があると思います。
今回、連絡先、今、山野目参考人からお話がありましたように、登記に、非居住者については国内の連絡先を登記事項として書いてもらうということになりました。それは大きな一歩であると思います。
ただ、非居住者の方については、これは別に、日本人も、非居住者になれば外国にいるということになって、戸籍や住民票からたどるということができません。そういう意味では、やはり探索の困難というものはあると思います。そこについては、ただ、今回、連絡先が入ったということは、一つ、一歩かなというふうに思います。
それから、土地基本法において土地所有者の責務がうたわれたということは、すなわち、それが個人であっても法人であっても、そしてどこの国の方であっても、日本の土地を所有する以上、責務があるんだよということが広くうたわれたということは意味があると思います。今まで、国民の責務というのはあったんですけれども、土地所有者の責務というのはなかったので、そこは一歩前進かなと思っています。
石田参考人 外国人に関しまして、外国の例でいきますと、大体、日本人であろうが外国人であろうが、不明者の探索というのは、基本的に、公示をして、公告をして、名のり出てこなかったら権利がないよ、そういうふうな考え方が外国の主流でございまして、日本はやはり戸籍がありますので、探索をしなきゃいけないという問題があります。
私は、経験した中で、アメリカ人の国籍の方が相続人になったケースがありまして、不明、これでどうしようかと思ったときに、専門の調査会社に頼みまして、アメリカのデータを全部捜していただきました。アメリカではやはり、そういう個人認証データというのは非常に充実していて、公開もされております。特に不動産関係の情報というのは非常にオープンにされております。そこから見つけることができました。
日本もやはり、これから非常に国際的になるとしたら、そういう個人データというものを非常に連動しなきゃいけない時代が来るかもしれません。
稲富修二 どうも、参考人の皆様、ありがとうございました。
以上で終わります。